第七百十八話 多くの鳥達その十
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「頭が二つある虫が互いに争う話があった」
「二つの頭がそれぞれですか」
「身体は一つでもな」
「そうなりますと」
「身体が持たないな」
「そうなります」
上等兵もそれはと答えた。
「間違いなく」
「同じ体を持っていても思考が違うとな」
「それぞれの頭で」
「身体の動きにもな」
「支障が出ますね」
「韓非子の様に争わずともな」
尚この書ではその虫は頭が潰れ合い滅んでいる、この書を書いた韓非はこのことから厳しい戒めを解いている。
「しかしな」
「それでもですね」
「考えが複数あるとな」
一つの身体にというのだ。
「まとまらない」
「その問題もありますね」
「そうしたこともあるしな」
「頭が複数あるとですね」
「よくはない、時折そうした生きものも生まれる」
「ハプスブルク家の紋章ですか」
上等兵はオーストリア王家のこの家のそれをここで思い出した。
「あの家の」
「神聖ローマ帝国の紋章だったな」
「あの家が神聖ローマ帝国皇帝家になったので」
「そのままハプスブルク家の紋章となったがな」
「双頭の鷲ですね」
「あれを実際に見た者もいたという」
そうした伝説が存在しているのだ。
「だがそれは稀でな」
「しかもそうした問題がありますね」
「だから寿命は短い」
生まれることが稀であるだけでなくというのだ。
「思考即ち行動がまとまらずともな」
「カロリー消費の問題で、ですね」
「それがあってな」
カロリーを大量に消費する器官が一つではなく複数だ、これがかなりの負担であることは言うまでもない。
「それでだ」
「その寿命はですね」
「短い」
「そうなりますか」
「だから頭はな」
「一つで、ですか」
「いいのだ、そういえば日本ではだ」
大尉は今自分達がいる国の話もした。
「複数の尻尾を持つ妖怪もいるが」
「猫又等ですね」
「前にも話したと思うが」
「尻尾を二本持ちその分ですね」
「妖力を持つというな」
「そうした妖怪ですね」
「あの妖怪はだ」
猫又はというのだ。
「あれでだ」
「尻尾が複数あり」
「妖力を備えている、尻尾はだ」
これはというのだ。
「別に身体にな」
「負担をかけないですか」
「そうだ、頭がな」
「問題ですね」
「脳はそれだけエネルギーを使いな」
「重要な部分ですね」
「そういうことだ、だが尻尾が多いなら」
それならというのだ。
「妖怪になるということはな」
「面白いですね」
「実にな」
こう言うのだった。
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