第130話『なりたい自分』
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うだ。
「すいません! 通ります!」
ドレスを揺らしながら、人混みを抜ける一人の少女。当然周りの目を引くが、誰もこの少女が少年であることに気づかない。もっとも、この時の晴登はそんなことを気にする余裕もなかったのだが。
「……視えた」
"晴読"を使って2人を探し、クールタイム中は走って探す。その繰り返しを何度かやって階段に辿り着いた辺りで、ようやく未来への導きが現れた。その風は階段を上るように進んでおり、その行き先は──
「屋上か」
一気に階段を駆け上がり、屋上へのドアを押し開ける。開けた視界の先には、2人の男女が立っていた。
ドアが開いた音に反応して2人は振り返る。そして晴登を見て驚いた表情を浮かべた。
「柊君の……狐太郎君のご両親ですか?」
「え、ええ」
まずは人違いではないことの確認。少し不安だったが合っていたようだ。
どちらも狐太郎に似て美形でスタイルも良く、年齢も晴登の両親よりも若そうだ。しかしその顔に覇気はなく、服も質素でなんかもったいないという印象だ。
ちなみに、狐太郎の親だからといって、耳や尻尾が生えている様子はない。病気は遺伝という訳ではないようだ。
「君はさっき狐太郎の隣にいた──」
「三浦 晴登といいます」
「三浦 晴登? ……そうか、君が山本先生の言っていた子だね」
「え?」
「この文化祭に来るために、山本先生に便宜を図ってもらったんだ。君のことはよく聞いているよ」
突然山本の名前が出て困惑したが、その付言を聞いて何となく察した。先生と保護者が連絡を取り合うことは不思議なことじゃないし。
「狐太郎が学校に行けるように一役買ってくれたそうだね。本当にありがとう」
やっぱり、この人たちは狐太郎のことを心配していたのだ。でなければ、こんなに柔和な笑みを浮かべるはずがない。
「それで、私たちに何の用かな?」
「えっと、さっきは狐太郎君に会いに来たんですよね? 何か伝えたいことでもあるのかと……」
「それを訊くためにわざわざここまで追ってきたのかい? 噂に違わぬお人好しだね」
噂、というのはこれまた山本によるものだろうか。どんな噂が流されているのか気にはなるが、今の目的はあくまで彼らと狐太郎の仲介。ひとまず噂の件は置いておこう。
「そうだね、今日は狐太郎に大事なことを伝えに来たんだ」
「……大事な、こと?」
含みのある言い方をされ、嫌な予感が頭をよぎる。まさか、狐太郎の病気はもう治らないとか? これから悪化するしかないとか? それとも、家族の縁を切る……とか?
「実は狐太郎の病気の原因が判明したんだ」
「ホントですか!?
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