第130話『なりたい自分』
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が柄にもなく声を荒らげたところで、張り合うように晴登も大声を上げる。
周りの目がこちらを向き始めるが、今は構っていられない。
「俺が無理言って君を外に連れ出したんだ。だったら、最後まで手を貸すのが筋じゃないの?」
これは偽善で、自己満足で、狐太郎の気持ちを度外視した晴登のエゴだ。彼が辛い過去を持っているのは知っているし、今も心のどこかで苦しんでいるのだろう。それでも、
「君は独りじゃない。ちゃんと両親に向き合ってあげて欲しい」
今回は『友達がいるから』ではなく、『両親がいるから』という意味だ。親と子が離ればなれのままなんて、そんなの良い訳がない。真っ直ぐな晴登の言葉に、狐太郎は押し黙ってしまう。
「ちょっとちょっと、どうしたの二人共?」
「ごめん、ちょっと席外すね」
「え、三浦君!?」
いつの間にか賑やかだった教室も静まり返っており、全員が晴登と狐太郎に注目していた。そんな中、ようやく話が落ち着いたのを見計らって、クラスの女子が声をかけてくる。普段口論することのない2人が騒いでいてさぞ混乱したことだろう。
空気を悪くして申し訳ないと思っている。だが、その償いはすぐにはできない。なぜなら今は、文化祭の出し物以上にやるべきことがあるから。
晴登は着の身着のまま、教室から飛び出して行った。
「柊君、何があったの?」
「……僕もちょっと休憩します」
「え? え?」
晴登に置いてけぼりにされ、残った狐太郎に事情を聞こうとするも、彼もそう言って教室から出て行ってしまう。
残された女子は状況が理解できず、ただただ困惑するのみだった。
*
「どこだ……」
晴登が廊下に出ると、もう狐太郎の両親の姿はどこにも見えなかった。ただでさえ人が多いのに、見失ってしまったら探し出すのは困難を極める。
顔は表情が印象的だったから何となく覚えているが、それだけの手がかりでは足りない。
──だから、この力に頼る。
「"晴読"!」
"晴読"を発動すると、目の前にいくつもの風の流れが現れた。この風一つ一つが未来を表しており、晴登はその内容まで把握できる。だから『晴登が狐太郎の両親を見つける』という未来を探すという作戦だ。
「本当は過去も視えたら楽なんだけど」
『あの2人がどこを通ったか』という"線"が視えれば、『あの2人をどこで見つけるか』という"点"で探すよりも効率が良いのは明らか。しかし、未来しか視えない晴登にそれはできない。
それにこれだけ人も多いと、その分未来の風も多い。『"晴読"の力を使う時は30秒のクールタイムを設けて5秒のみ』という自分ルールを守るためには、結局足を動かすことになりそ
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