第三百十六話 ケンタッキーの牧童その二
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「いるかも知れませんが」
「それでもです、もうこれだけの数を倒したなら」
それならとだ、保安官はギンズバーグに答えた、
「賊の力はありません」
「そうですか」
「はい」
まさにというのだ。
「お見事です」
「それで賊に捕まっていた女の人達ですが」
老人は彼女達のことを話した。
「どうなったのでしょうか」
「警察にも連絡しましたんで」
ギンズバーグは老人の問いに即座に答えた。
「今頃は保護してもらってます」
「そうですか」
「はい、しかしです」
ギンズバーグはここでだった。
困った顔になってだ、老人と保安官に対してこんなことを言ったのだった。
「僕実はこの世界に来たばかりで文無し宿無しで」
「そうなのですか」
「何も持っておられませんか」
「これからどないして生きて」
そうしてというのだ。
「世界を救うかです」
「おわかりでない」
「そうなのですね」
「はい」
そうだというのだ。
「実は」
「そうですか、ならです」
老人はギンズバーグにそれならと答えた。
「まずはこの辺りの顔役になってくれますか」
「この辺りのですか」
「この辺りは丁度レキシントンの南にありまして」
「あの街の」
「はい、こうして牧場が多いのですが」
それでもというのだ。
「顔役即ちまとめ役もおらず賊もです」
「あの様にですね」
「多くいまして」
「困ってますか」
「誰もが」
そうだというのだ。
「そうなっています」
「そやからですね」
「ギンズバーグ様さえよかったら」
「僕がこの辺りの顔役になってですね」
「取り仕切ってくれますか。お家と食べものそれに服も用意します」
「実は服もです」
ギンズバーグはそちらの話もした。
「今着てるのだけです」
「着の身着のままですか」
「はい、下着も含めて」
「それでは困りますね」
「そうですね、普段はこれでええですけど」
それでもというのだ。
「替えの下着やパジャマも欲しいです」
「やはりそうですね」
「もっと言えば下着はトランクスで」
このタイプの下着だというのだ。
「そやないとボクサーで」
「ブリーフはお嫌いですか」
「起きた世界にときたまブリーフ一枚でネクタイの剃刀みたいな目のアジア系のおっさんが出まして」
ギンズバーグはその人物の目に犯罪者の黒い目線を入れた姿を想像しつつ老人に対して深刻な顔で話した。
「しかもそのブリーフは全然洗ってへんで」
「それは酷いですね」
老人も話を聞いて引いた。
「まことに」
「しかも色は白なんで」
「汚れも目立ちますか」
「そんなおぞましいおっさんがいまして」
自分達が起きた世界にはというのだ。
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