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第三十六話 隻眼その十二

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「星ちゃん使わないからね」
「彼はそうだね」
 牙暁も残念そうに答えた。
「素直じゃないし」
「あれで気遣う人だから」
「それでだね」
「私の角膜使わないのよ」
「アイバンクに登録していても」
「星ちゃんの為にって思ってそうしたけれど」
 それでもというのだ。
「星ちゃんはそうで」
「そうしてだね」
「一つは他の人に移植してもらえたけれど」 
「もう一つはだね」
「それも右目がね」
 そちらの方の目がというのだ。
「残っているから」
「その右目をだね」
「昴流ちゃんにね」
 彼にというのだ。
「是非ね」
「使ってもらうんだね」
「そうしてもらいたいわ」
「庚に話しておくよ」
 牙暁は北斗の言葉を受けて彼女に約束した。
「それならね」
「そうしてくれるんだ」
「ええ、そしてね」
 そのうえでというのだ。
「彼にね」
「私の右目が移植される様に」
「そうなる様に手配してもらうよ」
「じゃあお願いね」
 北斗は牙暁に笑顔で頼んだ。
「星ちゃんが使ってくれないなら他の人にって思ってたけれど」
「彼はもうね」
「このまま使わないよね」
「そして」
 そのうえでとだ、牙暁はさらに話した。
「間もなく」
「そうなるつもりね」
「君が彼にかけた術はね」
「本当だったらね」
「彼を止めることになっていたよ」
 こう言うのだった。
「誰だってね」
「自分はそうなりたくないからね」
「だからそうなったけれど」
 それでもというのだ。
「けれどね」
「星ちゃんはもうね」
「終わらせるつもりだから」
 そう考えているからだというのだ。
「それでだよ」
「きっとね」
「そうするよ」
「そうよね、けれどね」
「それでもだね」
「私は最後の最後まで諦めていないし」
 それにというのだ。
「星ちゃんが使ってくれないなら」
「それならだね」
「昴流ちゃんに使ってもらうわ」
「そうしてだね」
「また両方の目でね」
 右目もというのだ。
「見てもらうよ」
「この世界を」
「そして過去を振り切って」
 そうしてというのだ。
「そのうえでね」
「生きていってもらうね」
「そうしてもらうわ」
 こう言うのだった。
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