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第三十六話 隻眼その十

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「実はずっと見える人が殆どいなかったんです」
「そうした力がないと見えないからな」
「お祖母ちゃんは見えたんですが」
 それでもというのだ。
「前にいた学校の先生もお友達も」
「誰もか」
「犬鬼が見えなくて」 
 寂しい顔での言葉だった。
「そのことが残念でした」
「そうだったんだな」
「ですが今はこんなにです」 
 天の龍の仲間達を見て言うのだった。
「いてくれますから」
「だからか」
「凄く有り難いです」
 こう神威に話した。
「私は」
「そうか」
「ずっと何時か犬鬼が見える人が大勢出てくれると考えていたら」
「俺達に出会えたか」
「ですから」
 それでというのだ。
「私は嬉しいです」
「前向きに考えてか」
「明るく、そうしたらです」
「その通りになったか」
「そうでした」
 まさにというのだ。
「ですから本当にです」
「今の状況はか」
「ずっと皆さんと一緒にいたいです」
「そう思える位か」
「私にとって」
「そやな、今のわい等の状況はええと思うで」 
 空汰は護刃のその言葉に頷いて述べた。
「皆揃ってて昴流さんの目み移植手術で治る」
「だからか」
「命に別状はなかったしな」
 それにというのだ。
「それも手術を受ければ治るんやったらな」
「いいか」
「ああ、戦いがはじまったのに皆揃ってるしな」
「だからか」
「ええと思うで。それでな」
 空汰は神威にさらに話した。
「若し何かあってもな」
「それでもだな」
「力を合わせてな」  
 そうしてというのだ。
「乗り切っていこな」
「そうするか」
「ああ、それで昴流さんが退院したらや」 
 空汰はその時のことも話した。
「退院祝いのパーティー開こうか」
「そうするか」
「折角やしな。それでな」 
 神威に対して話を続けた。
「その時に出す料理のこともな」
「考えていくか」
「ああ、今からな」
「隊員は案外早いかも知れないわね」 
 火煉は微笑んで言った。
「それは」
「傷の回復が早いからか」
「私達はね」 
 天の龍の者達はというのだ。
「それはあちらもだけれど」
「地の龍の方もか」
「お互いにね。それでよ」
 さらに言うのだった。
「昴流さんもよ」
「すぐにか」
「退院するかもね」
「そうなるか、ならな」
「ええ、パーティーを開くのは」 
 昴流が退院した祝いのそれをというのだ。
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