第五章
[8]前話
「味の方はな」
「期待出来ないですか」
「そうですか」
「牛や豚を食べた方がいい」
こう二人に言うのだった。
「遥かにな」
「いや、食べたいと思わないですから」
「絶対に」
二人は妖怪に断りを入れた。
「彭侯さんを食べるとか」
「想像出来ません」
「妖怪さんを食べるとか」
「そんなことは」
「そうか、まあわしもわしを食いたいと思った者に会ったことはない」
彭侯自身もというのだ。
「これまでな」
「そりゃいないですね」
「流石に」
「人面の犬さん食べたいとか」
「普通は」
「食った者はおってもな」
過去そうした者はいてもというのだ。
「しかしな」
「それでもですね」
「彭侯さんご自身はですね」
「ない、それでお主達大阪に古い木があるかどうか確かめたかったそうだが」
今度は話を原点に戻してきた。
「わしがおることでもわかるな」
「はい、ちゃんとありますね」
「大阪にも古い木が」
「左様、このことを覚えておくのだ」
こう言うのだった。
「よいな」
「はい、わかりましたし」
「覚えておきます」
二人もそれならと答えた。
「これからは」
「頭に入れておきます」
「その様にな、それでもう暗い」
妖怪は今度は周りを見回して話した。
「女の子はな」
「帰った方がいいですね」
「もう」
「だからな」
それでというのだ。
「家に帰るのだ」
「そうします」
「これから」
「その様にな」
二人に告げてだった。
妖怪は消えた、二人は彼が消えてから話した。
「いや、まさかね」
「ここで妖怪さんに会うなんてね」
二人で話した。
「思わなかったわね」
「そうよね」
「ただね」
葵は仁美に言った。
「最初本当にね」
「人面犬って思ったわね」
「そのままだからね」
「けれどね」
仁美も言った。
「違ったわね」
「木の精霊さんなんてね」
「何で犬の身体でそうか」
「そこはわからないけれど」
「まあそうした妖怪さんもいる」
「そういうことね」
葵は納得した様にして言った。
「世の中って」
「そうね、それでもう暗いし」
「うん、コンビニに寄るって言ったけれど」
「実際に寄ってね」
それでというのだ。
「アイスでも買って」
「それで帰ろう」
「そうしよう、それでね」
「お互い晩ご飯食べよう」
「そうしよう」
こうした話をしてだった。
二人は自転車に乗ってコンビニに行ってからそれぞれの部屋に帰った、そして二人共母親に遅いと少し小言を言われてから晩ご飯を食べた。そのうえでそれぞれの夜を過ごした。
彭侯 完
2023・9・28
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