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仮面ライダーAP
夜戦編 蒼き女豹と仮面の狙撃手 第7話
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化学反応が起こるか楽しみじゃあないか。期待の適合者候補と、『私の仮面ライダー』が今まさに、凶悪な鉄人から世界を救おうとしている……。実に興味深いヒーローショーだと思わないか?」

 光の隣から苦言を呈している、白衣を纏った知的な美女――亜灰縁(あくいえん)は、光の奔放な振る舞いに深くため息を吐いていた。横顔を一瞥するだけで、光の思惑を容易く見抜くほどの「深い付き合い」があるようだが、彼女の性格にはいつも手を焼いているのだろう。

「いつもながら、貴女の感性には呆れるばかりですね。そう遠くないうちに地獄に堕ちるのではないかと」
「おやおや、これは手厳しい。……だが、地獄に堕ちるべきなのは私だけではないさ」

 呆れ果てたと言わんばかりにため息を吐く縁の反応を前にしても、光は笑みを崩すことなくモニターを見つめている。ジャスティアライダー達の中でも彼女が特に気に掛けている、「仮面ライダーオルバス」こと忠義・ウェルフリットは今まさに、ミサイルスパルタンの要塞形態(フォートレスフォーム)と雌雄を決しようとしていた。

「……ふゥン?」

 ハッキングした監視カメラの映像から、オルバスとミサイルスパルタンの死闘を「観戦」している光。彼女は口元こそ愉悦の笑みを見せているのだが――戦いの行方を見つめる鋭い双眸は、全く笑っていない。

(……2009年に凍結・抹消されていた、人類初の仮面ライダー量産計画。そんな「スパルタン計画」から生まれた最後の鉄人……ミサイルスパルタン、か……)

 約11年前の2009年。この北欧某国の英雄――ジークフリート・マルコシアン大佐が率いていた「マルコシアン隊」によって運用されていたという、スパルタンシリーズ。あまりにも誕生が早過ぎた、その鋼鉄の鎧は全て、旧シェードとの戦いで跡形も無く消え去ったのだという。

 光もそれらの存在は、僅かな記録……の残滓でしか知らない。そもそもスパルタンシリーズ自体、その戦いの後に軍部の公式記録からもほとんど抹消されている、幻の存在なのだ。分かっていることと言えば、当時生産された試作機のほとんどが、現代の新世代ライダーやジャスティアライダーのスペックには遠く及ばないものだったということくらいだ。

 その未熟な鎧で戦火に身を投じ、愛する国や人々のため、勝ち目のない戦いに飛び込んで行った当時の装着者達が、どんな思いで死地に赴いていたのか。そんなこと、知る由もない。それに、今さら知ったところで意味はない。だが、想像することくらいは出来る。
 例え歴史に記録されずとも、仮面ライダーとして認められずとも。スパルタンシリーズの鎧を纏って旧シェードに立ち向かった戦士達は、己の命を燃やし尽くし、見事に使命を完遂した。すでに役割を終えた彼らも、彼らの鎧も、静かに眠るべきなのだろう。

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