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柳と蝗
第三章

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「そうだったのだ」
「ああ、だからですか」
「その為にですか」
「蝗は柳の葉を喰らったのですか」
「そればかり」
「そして」
「そうだ、蝗神のお言葉だが」
 女の姿をしたこの神というのだ。
「それはな」
「罰を与えるという」
「それは柳に対してで」
「そうであったので」
「柳の葉だけをな」 
 まさにそれだけをというのだ。
「喰らったのだ」
「そうなのですね」
「何かと思えば」
「そうしたことでしたか」
「うむ、柳の神に感謝しよう」
 知事は心から言った。
「全てはその神のお陰だからな」
「全くですね」
「この州が蝗から救われたのは」
「柳の神のお陰です」
「厚く祀り感謝しよう」
 こう言ってだった。
 知事は柳の神を祀り心から感謝した、するとその夜また緑の衣の痩せた男即ち柳の神が出て来て知事に言った。
「当然のことをしたまでのこと」
「ですがそれで貴方様が」
「葉はまた戻る、何でもない」
「そうなのですか」
「それよりも州の民が救われて何より」
 知事に微笑んで言うのだった。
「私はそれを喜ぶ、だが難はまだある」
「戦ですか」
「そうだ、今天下は乱れているな」
「それも極めて」
「明の命運は尽きている」 
 神は知事に話した。
「そのことも踏まえてだ」
「これからのことをですか」
「考えるのだ、よいな」
「わかりました、ではこれからはです」
「戦のことをだな」
「考えて動きます」
「明の命運が尽きていることをな」
 神は知事に話した。
「頭に入れてな」
「動くべきですね」
「左様、よいな」
「それでは」
 知事は頷いた、そのうえでだった。
 今度は戦乱に備えた、そして州の民を救ったという。そのうえでまた柳の神を祀った。明代末期に伝わる話である。


柳と蝗   完


               2023・4・11
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