第一章
[2]次話
柳と蝗
明代末期のことである。
沂州今で言う山東省に蝗が出た、そして田畑を存分に荒らしていた。州の知事はその状況に困り果てていた。
「よりによってだ」
「天下が大変な時にですね」
「乱れている時にです」
「蝗なぞ」
「悪い時には悪い時が重なるが」
知事仮にその名を曹周三とする彼はその厳めしく生真面目そうな髭のない顔を顰めさせて言った、その顔には髭がないが皺は多い。髪の毛はかなり白い。
「まさにだな」
「全くです」
「ここにきて蝗とは」
「乱れている時にとは」
「厄介なことです」
「兵乱はまだ何とかなる」
そちらの災厄はというのだ。
「軍勢がいればな」
「はい、しかしです」
「蝗はそうはいきませぬ」
「軍勢でもどうにもなりませぬ」
「これが」
「それこそ去るのを待つしかないが」
蝗の群れがというのだ、空を覆わんばかりの。
「しかしな」
「それまでにですね」
「田畑がどうなるか」
「どれだけ食い荒らされるか」
「衣まで喰らいますし」
「何もかもそうしますので」
「こんなに恐ろしいものはない」
蝗程というのだ。
「全く以てな」
「左様ですね」
「何とかなればいいのですが」
「このままでは民が飢え死にします」
「口にするものを蝗が全て喰らい」
「そうなるので」
「そうだ、どうしたものか」
知事は苦い顔で言うばかりだった、それは起きている間ずっと思う琴であった。だがその中で眠るとだった。
彼は夢である痩せた男と会った、男は緑色の衣と位の高い者が被る冠を被っていた、その彼が知事に行ってきた。
「そなた蝗のことで悩んでいるな」
「はい」
知事は男に畏まって答えた。
「さもないと民達が飢え死にします」
「そうだな」
「この様な中で蝗とは」
天下が乱れる中でというのだ。
「真にです」
「難儀であるな」
「そう思って仕方ないです、ですが蝗は」
「中々な」
「どうにかなるものでなく」
それでというのだ。
「私もです」
「困り果てておるな」
「どうしたものか」
「それならだ」
知事の話をここまで聞いてだ、男は彼に話した。
「一つよいことを教えよう」
「蝗をどうにか出来ますか」
「うむ」
その通りという返事だった。
「それが出来る」
「それは何よりです、ではです」
知事は男の言葉を聞いて目の色を変えた、そのうえで彼に問うた。
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