第二章
[8]前話
「あの方です」
「私のお父様でもあります」
「左様でしたね」
「ようやくタンタロスから出られましたが」
「何よりでしたね」
「我が夫と和解して」
それまでは戦に負けそちらに他のティターンの神々と共に幽閉されていたのだ、その監視役は彼がかつて忌み嫌って幽閉した百の頭と腕を持つ巨人ヘカトンケイル達だった。
「そうなりましたが」
「あの方がお父上で」
「母親は我が従姉でもある」
「オケアノス様のご息女ピリュラー様でしたね」
「そうです、二人が愛し合っているところをです」
ヘラは苦い顔で述べた。
「私は偶然見てしまい」
「それで、ですか」
「お父様はすぐに馬に身を変えられて去られましたが」
しかしというのだった。
「我が従姉は見られたことを恥じてです」
「そうしてですか」
「その場でその姿を菩提樹に変えてしまったのです」
「そうだったのですか」
「私は別に不義でもなかったですし」
それを嫌う家庭の女神として話した。
「ですから何もするつもりもなかったのですが」
「それでもですか」
「従姉はそれを恥じて二度とそうしたことをしない様に」
「あの木にですか」
「姿を変えてやがてです」
「ケイローン様をですか」
「生み落としたのです」
そうだったというのだ。
「それでなのです」
「あの方はあの木を大切にされていますか」
「そうです、また従姉は病を癒し未来を予言出来たので」
そうした力を持っていたというのだ。
「菩提樹のお花は薬となり皮は占いの道具になるので」
「あの方は尚更ですか」
「あの木を大事にしているのです」
「そうした事情があるのですね」
「はい」
まさにというのだ。
「そうなのです」
「そうでしたか」
「はい、これで事情はわかりましたね」
ヘラはポッピオスの目を見て彼に問うた。
「貴方も」
「よく。お母上であられ」
「その力があるので」
「それでなのですね」
「左様です」
「わかりました、ではこれからも」
「菩提樹を大事にする彼にですね」
今度は微笑んで陀、ヘラはポッピオスに問うた。
「仕えますね」
「そうされます、親を大事にするそのお心も」
「立派ですね」
「そう思いましたので」
「ではこれからも」
「あの方に誠意を以てお仕えします」
ポッピオスはヘラに誓った、そして実際にだった。
女神の下を去ってからも彼はケイローンに仕え続けた。そのうえで彼を敬愛し続けた。ただ聡明で知識と人格を備えただけでなく愛情も備えている彼に。
母の木 完
2023・4・14
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