第四章
[8]前話
「大丈夫だ」
「代わりでしているしね」
「しかもこれで家まで帰らないとな」
「娘は元に戻らないから」
「だからだ」
「このままいくわ」
こう言ってだった、馬達はそのまま自分達の横を歩かせそうしてそのうえで夫婦で一緒に街に帰った。
その間二人は交代で娘が姿を変えられた石を背負ってだった。
そのうえで進んでいった、そして。
遂にだ、家に着くとだった。
娘は元の姿に戻った、それを見た夫婦は泣いて喜んだ、そうしてそれからは一家で仲良く暮らしていった。
やがて二人はその中で実家の老婆石屯から見れば実母玉花から見れば義母にあたる彼女が野垂れ死んだと聞いたがもう何も思わなかった。
そして木の精はというと。
二人に自分のことを教えた老婆が泉に来た時にこう言われた。
「あんたも約束は守ったね」
「約束は守らないとな」
木の精は強い声で答えた。
「やはりな」
「だからか」
「うむ、娘はしっかりとだ」
「石から元の姿に戻し」
「そしてだ」
そのうえでというのだ。
「妻にすることは諦めた」
「そうなのじゃな」
「しかし考えてみればな」
木の精は腕を組みこうも言った。
「人間を妻に迎えてもな」
「それでもか」
「寿命が違うからな」
それでというのだ。
「どうしても先に旅立たれてな」
「お主はその都度妻を迎えておるのう」
「正直その都度別れて」
木の精は悲しい顔になって述べた。
「辛い思いをしている」
「そうなのか」
「だからな」
それでというのだ。
「もう人間の妻でなくな」
「あんたと同じか」
「木の精の妻を迎えるか」
「そうしたらいい、そうしたら今回みたいなこともじゃ」
老婆は木の精に笑って応えた。
「なくなる」
「そうだな、正直あの夫婦には迷惑をかけた」
木の精は反省もして述べた。
「ならな」
「これからはじゃな」
「木の精霊の妻を迎える」
「ではわしはどうじゃ」
ここでだ、老婆は。
姿形はそのままだが黄色の服になって彼に話した。
「わしも木の精であるしな」
「お主は銀杏のな」
「丁度いいであろう、お主もわしも近い歳じゃろ」
「そうだな、ではな」
「それではだな」
「一緒にな」
それでというのだ。
「これから暮らそうぞ」
「それではな」
二人で楽しく話した、そしてだった。
以後木の精は人に何かすることはなくなった、中国に古くから伝わる話である。木にはこうした話もあるということか。
楓の人さらい 完
2023・4・15
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