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鬱陶しい兄
第一章

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                鬱陶しい兄
 阪神タイガースがリーグ優勝を果たした、すると熱狂的な阪神ファンである根室家の息子で中学三年生の寿はこの上なく上機嫌になった。
「最高だよね」
「それ言ってもう三日目だぞ」
「気持ちはわかるけれどいい加減にしなさいね」
 家で両親に注意される程だった。
「阪神が優勝しても」
「少しは自制するんだ」
「自制してるよ、だからね」 
 息子は笑顔のまま言った。
「難波まで行って」
「道頓堀には飛び込まなかったか」
「そうなのね」
「そうだよ、僕だってね」
 それこそというのだ。
「自制してるから」
「あんな汚いところに飛び込む方がおかしいだろ」
「お父さんの言う通りよ」 
 両親はこう息子に返した。
「何を言うと思えば」
「常識じゃないか」
「だから常識を守ってるから」
 そうしているというのだ。
「いいじゃない」
「それでもな」
「あんた最近浮かれ過ぎよ」
「阪神が優勝してな」
「幾ら何でもね」
「こんな嬉しいことないからね」
 結局その喜びを隠さない寿だった、そしてこうも言うのだった。
「やっぱり甲子園で巨人を成敗しての胴上げだったしね」
「それはいいけれどね」
 今度は妹の千佳が応えた、小学四年生の彼女が。
「巨人ざま見ろで」
「千佳もそう思うよな」
「巨人についてはね」
 兄に冷めた目で返した。
「そう思うわ」
「じゃあ阪神はどうなんだ」
「正直うざいわよ」
 これが妹の返事だった。
「もう三日目よ」
「お前だってカープ優勝したらこうなるだろ」
「それでも他の人がやるとよ」
「嫌か」
「嫌じゃないけれど」
 それでもというのだ。
「今言った通りにね」
「うざいんだな」
「鬱陶しいわ、お部屋の中でやって欲しいわ」
「お部屋の中でもやってるぞ」
「じゃあ学校えも?」
「勿論だよ、阪神が優勝したんだぞ」
 だからだというのだ。
「それならな」
「何処でもなのね」
「僕はこうだよ」
 喜びを身体全体で表現して言葉にも出しているというのだ。
「阪神を愛しているんだからな」
「それで優勝したから」
「嬉しいよ、岡田監督は英雄だよ」
 こうも言うのだった。
「もうな」
「そこまでの人ね」
「阪神ファンにとってはな、選手の人達もな」
 誰もがというのだ。
「よくやってくれたよ」
「全員で掴んだ優勝ね」
「アレだよ」
 岡田監督の言葉を借りて言った。
「まさにな」
「アレね」
「アレを果たしたんだよ」
 阪神はというのだ。
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