第三十六話 隻眼その七
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「そしてよ」
「本来の俺にか」
「戻ったのよ」
「そうなのか」
「そう、心を開いて」
そうしてというのだ。
「本来の貴方にね」
「俺は戻ったか」
「そして」
そのうえでというのだ。
「一人でないこともね」
「気付いたか」
「そうだと思うわ」
「そうなのか」
「そしてね」
嵐はさらに言った。
「貴方はこれからもね」
「支え合って助け合って生きていくか」
「皆とね」
「小鳥。皆に」
天の龍のというのだ。
「そして封真ともか」
「そうなるわ」
「そうか、いいものだな」
神威はここまで聞いて微笑んで言った。
「それは」
「そう思うのね」
「心からな」
こう嵐に答えた。
「思える」
「それは何よりよ、ではね」
「これからもだな」
「そうして生きていきましょう、私もね」
嵐自身もというのだ。
「一人でないし」
「あんたはこの中では孤高というかな」
「一人だとなのね」
「思っていたがな」
言葉は過去形だった。
「違うな」
「私は最初一人だったわ」
嵐は神威の言葉にまずは遠い目になって述べた。
「そして餓えていて何もね」
「なかったか」
「それが大社に迎えられて」
伊勢神宮にというのだ。
「餓えることもなくなって」
「そうしてか」
「多くのものをいただいて」
そうしてというのだ。
「一人でもね」
「なくなったか」
「伊勢の人達に」
大社にいる彼等と、というのだ。
「ここにいる皆とね」
「天の龍とか」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「一人でないことをね」
「実感しているか」
「けれど一人だとどうかしら」
火煉は深刻な顔で言ってきた。
「周りに誰もいない、本当はいても」
「気付かないか」
「そうした状況ならね」
こう神威に話すのだった。
「どうかしら」
「かつての俺の様にか」
「そして私も同じだったわ」
火煉は自分もと話した。
「一人は寂しいものでしょ」
「ああ、本当にな」
神威もまさにと頷いて答えた。
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