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第三十六話 隻眼その一

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                第三十六話  隻眼
 牙暁は星史郎の夢の中で彼に言った。
「彼のことだけれど」
「右目を失いましたね」
「わかっているんだね」
「はい」
 星史郎は牙暁に答えた、今二人は夢の中で向かい合って立っている。
「あの時の怪我を見れば」
「貴方と同じになったけれど」
「僕は僕なんですがね」
 微笑んで述べた。
「あくまで」
「だからかな」
「昴流君は昴流君でいていいといいますか」
「いるべきだね」
「そう思います」
 こう言うのだった。
「あくまで」
「それは本音だね」
「そうです、嘘ではないです」
 このことを断った、
「正直に言っています」
「そうなんだね」
「僕は嘘吐きでもです」
「今は嘘ではなくだね」
「本音を言っています」
「夢では嘘は吐けない」
「そのこともありますし今は」
「本音を話したいんだね」
「そうした気持ちです」
 こう言うのだった。
「今の僕は」
「そうなんだ、それでは」
「お話をですか」
「僕もしたいと思っているから来たし」
 だからだというのだ。
「していこう」
「それでは」
「うん、それで」
 さらにだ、牙暁は星史郎に言った。
「桜塚護のことは」
「申し上げた通りです」
「彼は彼だね」
「北斗さんもそうですし」
 彼女のことも話した。
「そしてです」
「彼は彼で」
「ですから」
 それでというのだ。
「僕はこのことは言いませんが」
「僕の見立て通りでいいかな」
「ご想像にお任せします」
「それではね」 
 牙暁は目を閉じて俯いて答えた。
「そうさせてもらうよ」
「その様にして下さい」
「そして君にお願いがあるけれど」
「死なないで欲しい、ですね」
 星史郎はここでも微笑んで応えた。
「そうですね」
「お願い出来るかな」
「運命ですね」
 星史郎は牙暁の願にはこの言葉で答えた。
「それは」
「運命なんだ」
「はい、僕と昴流君の」
 二人のというのだ。
「それは」
「君は本心では」
「どうでしょうか」 
 ここでもそれを隠すのだった。
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