夜戦編 蒼き女豹と仮面の狙撃手 第1話
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――2020年7月下旬深夜。北欧某国領海内に位置する海上要塞「シャドーフォートレス島」は、凄絶な戦場と化していた。
この当時、ノバシェード対策室所属のヘレン・アーヴィング捜査官が、裸より恥ずかしい格好でこの島に潜入して来ていたのである。島中に鳴り響く警報、轟音、爆音、銃声。その全てが、ノバシェード構成員の巣窟と化していたこの島を脅かしている。
『侵入者を発見! 直ちに侵入者を排除せよ! 繰り返す、侵入者を発見――!』
緊急警報のアナウンスが薄暗い地下要塞の全域に鳴り響き、野戦服姿の兵士達が物々しい重火器を構えながら、通路を慌ただしく走り抜けて行く。そんな彼らの喧騒を他所に、独り悠々とした佇まいで歩みを進めていた「司令官」は――ある1人の若き将校と相対していた。
「……ホークアイザー少佐、どこに行くつもりだ。侵入者の始末に向かえと、私は確かに命じたはずだぞ」
2m近い巨躯と荘厳な覇気を纏うアレクサンダー・アイアンザック中将。この島の司令官である彼は漆黒のマントを靡かせ、眼前の将校を鋭く射抜いている。「侵入者」ことヘレン・アーヴィングの抹殺に動いている他の兵士達とは真逆の方向に歩み出していた将校に、彼は訝しげな視線を向けていた。
「えぇ。今まさに、その『侵入者』の始末に向かっているところです」
「なに……?」
一方、195cmという長身の持ち主である若き将校――ミロス・ホークアイザー少佐は、アイアンザックの迫力を前にしても涼しげな微笑を浮かべている。その全身は青と黒を基調とする強化外骨格に覆われており、彼が小脇に抱えている仮面は、アイアンザックが纏っている旧時代の遺物と同じ意匠が施されていた。
さらにその背中には、身の丈を超えるほどのサイズを誇る大型の特殊狙撃銃が装備されている。ボルトアクション式レバーの存在が窺えるその狙撃銃は、持ち主の鎧――「スナイパースパルタン」と同じ青基調に塗装されていた。
――約11年前の2009年に起きた、旧シェード北欧支部との武力衝突。その戦場において歴史に名を刻むほどの活躍を果たした、この北欧某国の象徴たる絶対的な「英雄」が居た。アイアンザックの元弟子にして部下でもあった、ジークフリート・マルコシアン大佐だ。
彼が率いていた最強の陸戦部隊「マルコシアン隊」は、当時の陸軍が開発した試作強化外骨格「スパルタンシリーズ」の鎧を纏い、旧シェードの怪物達に敢然と立ち向かったのだという。だが、その戦いで部隊は隊長のジークフリートを除き全滅。スパルタンシリーズの試作機全ても大破し、開発計画の責任者だったアイアンザックはこのシャドーフォートレス島に左遷された。
そして唯一生き残ったジークフリートも、「エンデバーランド
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