敢闘編
第七十一話 勝者のない戦い
[7/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
二艦隊を援護に回らなければならない。
結果として叛乱軍の戦列には変化が起きていた。前衛に第十二艦隊、その右後方に第二艦隊、左後方に第一艦隊…という序列に変化していた。
「アントンは後退、戦列に復帰せよ。アントン復帰後、後退だ」
ヒルデスハイム伯の指示は冴えていた。帝国の藩屏とやらも中々やりますな、とロイエンタールが呟くのが聞こえた…。
14:20
自由惑星同盟軍、アムリッツァ駐留軍第一任務部隊、
旗艦アストライオス、宇宙艦隊司令部、
ヤマト・ウィンチェスター
敵ながら見事というしかなかった。此方の採った戦法をすぐさま真似て、此方の追い足を止めた…。相変わらず敵は微速で後退している。もう一度あれをやられたら、と第二艦隊は追撃に及び腰になっていた。そのお陰で、というかそのせいで各艦隊とも微速で敵に追従する有り様だった。敵は撤退を目的として積極的に攻勢に出たんだ…とするとヒルデスハイム艦隊が俺達を待ち構えているのは明らかだった…こうなってしまうとどうしようもない。クブルスリー提督が第一艦隊も前に出る、と申し出てくれたが、そうなるとヒルデスハイム艦隊の後方の二つの艦隊も前に出てくる事は容易に想像出来た。
「後ろのシュトックハウゼン艦隊、クライスト艦隊が急速に後退して行くが…追うのか」
オットーの声にも力がない。もう司令部の誰もが敵の意図を理解していた。
「追撃は続行する。今追撃を止めてしまえば、敵は全艦隊で急速にこの宙域から去るだろう。そうなってしまったらヴィーレンシュタインに向かっている第九艦隊だけでは抑えられない。追撃は敵がフォルゲン宙域を去る迄でいい…一歩も引かない、という姿勢を見せれば充分だ」
「…俺達もヴィーレンシュタインに向かえば第九艦隊と挟撃出来るんじゃないのか?」
「…敵は負けて退く訳じゃない。充分に体勢を整えて退いて行くんだ。このまま行けば最初に退いた二個艦隊が第九艦隊の相手を、俺達の相手をするのは目の前の三個艦隊だ。相手は待ってましたとばかりに攻撃してくるだろう。此方も負けはしないだろうが、負けに等しい戦いだ。これ以上の損害は許容出来ない…戦力の回復に時間がかかる。追い返した、これで充分だ。第九艦隊に超光速通信を。無理をするな、監視に留めよ、と」
「了解した」
オットーが俺の肩を叩いて通信オペレータの元に向かった。奴の心遣いが嬉しかった。敢えて挟撃するのか、と聞いて来たのは、皆に戦闘が終結に向かっている事を悟らせる為だったのだろう。確かにヴィーレンシュタインに向かっている第九艦隊と挟み撃ちすれば結果はまだ分からない。だがそれは消耗戦覚悟の戦いとなる。それだけは避けなくてはならなかった。
「ほらよ」
マイクがお疲れとばかりに褐色の液体の入ったグラスを手渡す。またこれか
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ