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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
敢闘編
第七十一話 勝者のない戦い
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消耗戦は避けたいが、現実はそうもいかないようだ」
そう言うと一息でワイングラスを空にして、腕を組んで何事か考えている。後を継いだのはミッターマイヤーとロイエンタールだった。
「叛乱軍の残存兵力が予想通り三万隻程度であれば、艦艇数において一個艦隊分の損害を与えた事になります。撤退するのに充分ではありませんか」
「そうだな…大佐、如何です、戦術単位としての一個艦隊の撃破には至っておりませんが、叛乱軍に対し損害は充分に与えております。それに残念な事ではありますが、我が軍の損害も無視は出来ません。撤退すべきです」
尤もだ、尤もな話なのだが…
「二人共、撤退はない」
参謀長の言葉に両中佐が顔を見合わせている。驚いているだろう、それはそうだ、俺も先程聞いて驚いたばかりなのだから。
「ヒルデスハイム艦隊司令部の総意として、閣下は総司令官に撤退を進言なさったのだが…総司令官は否と仰られた」
総司令官の気持ちは分かる。形として目に見える結果が欲しいのだ、叛乱軍に一万五千隻の損害を与えた、という結果はいかにも中途半端だ。規模は同じでも一個艦隊撃破と言うのとではかなり印象が違う。
「しかし時間がありません。おそらく叛乱軍は…」

”司令部参謀は艦橋に集合“

俺の言葉を艦内マイクが遮って、集合を告げている。何か急が起きたのだろう…。

 「休んでいる所を済まないな。状況が変わった、撤退だ」
「何かあったのですか」
俺達を代表して参謀長が質問した。いい変化なら有難いが…。
「ボーデンにて隠密監視を行っていた通報艦からの情報だ、ヴィーレンシュタインに向けて叛乱軍が動き出した様だ」
「まずいですな…動き出した叛乱軍艦隊の規模は分かるのですか?」
「うむ。一個艦隊規模らしい」
一個艦隊だと?叛乱軍は何を考えている?




7月1日10:30
ボーデン宙域、自由惑星同盟軍、アムリッツァ駐留軍第二任務部隊、第九艦隊旗艦ヘーラクレイダイ、
宇宙艦隊司令部、ヤン・ウェンリー

 
 一個艦隊では駄目だ、せめて二個艦隊欲しかった…。
「済まないヤン、俺のせいで」
「本来なら私が言わなくてはならなかったんだ。気にするな」
ワイドボーンが深々と頭を下げる。宇宙艦隊司令部参謀である我々と、ワイドボーンの言葉に明らかに気分を害した提督達との感情の行き違いを懸念したコーネフ提督が、折衷案を出したのだ。

『ヴィーレンシュタインに進出する。進出は当艦隊が行う、残りの各艦隊はボーデンに残り増援到着まで現地を警戒せよボーデン残留の各艦隊の先任指揮官はバウンスゴール中将とする』

 コーネフ提督は全兵力で進出したかった様だが、スタッフや指揮官の間に遺恨を残すのはまずいと判断したようだ。確かに指揮官同士の感情の行き違いが作戦に及ぼす影響は大
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