第170話
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二人がそんなやり取りをしていると。
「ぷっ、お前達は相変わらずだな。」
くすくす、と笑いながら割れた窓の近くに背中を預けている女性が立っていた。
この学校の冬用の女子生徒の制服を着ている。
麻生はその女性の事を知っている。
「何ですか、芹亜先輩。」
「よせよ、お前に先輩なんて言われたら癖になりそうだ。」
「もう二度と呼ばないから安心しろ。」
「それはそうと、そろそろ離してやらないと上条が昇天するぞ。」
芹亜の言葉を聞いて、視線を上条に戻す。
さっきまで騒いでいたのに、今では腕に力はなくだらしなく下がっている。
麻生は手を離すと、両手でこめかみを押える。
「し、死ぬかと思った。」
心の底から言う上条を見て、芹亜はくすくすと笑いを堪える。
芹亜に見覚えがない上条は誰?、と言った感じで首を傾げる。
「そう言えば、『今』のお前は初対面だったな。
彼女は雲川芹亜。
何年何組に所属しているかは誰も知らず、教師ですら彼女の所属クラスなどを把握していない、謎の多い女子生徒だよ。」
雲川芹亜とは何度か話をした事があった。
もちろん、麻生からではなく芹亜からだ。
それからちょくちょく学校で会えば二、三言話し合う程度に知り合った。
その際に、上条も話をした事があるのだが、彼は記憶喪失になっているので初対面という事になる。
「それって不審者じゃないの?」
説明を聞いて率直な感想を述べた。
「間違っていないな。」
「おいおい、本人を前にしてそれはない思うけど。」
そう言ってはいるが、芹亜は気にはしていないようだ。
「つか、俺達に何か用か?」
「別に意味はないけど。
相変わらずのコンビだから、それを見て笑っているだけだ。
本当にこの学園は飽きない。」
放課後になり、荷物を纏めて教室を出る。
横には制理も歩いている。
帰る家は一緒なので、麻生も何も言わない。
最初の方は二人が一緒に帰るたびに、クラスメイト達は冷やかしの言葉を言っていたが、もう慣れたのか誰もそんな事は言わなくなった。
彼らが一緒の家に住んでいると知られれば、比べ物にならないくらい騒ぎになるが。
「今日は病院に寄るぞ。」
「分かっているわよ。
黄泉川さんの退院でしょう。」
マンションに帰る道とは別の道を歩きながら話をする。
今日は黄泉川愛穂が退院する日だ。
腕と足を切断された愛穂だが、学園都市製の義手と義足をつける事になった。
彼女自身、警備員の仕事もやりたいと言っていたので、かなり丈夫で精巧な義手と義足を用意してもらった。
今までそれらを日常生活や仕事に影響が出ないように、リハビリをしていたのだが、昨日の夜にカ
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