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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第171話:光明への気付き
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「でもこの二つに一つじゃない?」

 実際には他にも色々と選択肢はあるだろう。颯人が上げた二つはある意味で極論過ぎる。だが敢えて彼はここで極論の二つに選択肢を絞った。そこからクリスが抜け出そうとしたところに、本当の彼女の気持ちがあると考えたからだ。

 果たして彼の目論見通り、クリスは二者択一の選択肢のどちらも選ぶ事無く抜け道を求めるような言葉を口にした。

「そんなの……どうしたいかなんて、いきなり言われたって……透が今何考えてるかだって分かんねえんだぞ。それなのに……」
「(これか……)なら、透の事を良く知ってる誰かにアドバイス貰いに行くのも一つの手じゃねえかな?」
「え?」
「颯人、それって……?」

 透の事を良く知る人物。クリス以外でそんな人物となると、該当する人物は1人しか存在しなかった。

「確か、透の親父って生きてるんだろ? なら、相談する相手としちゃ最適だと俺は思う。クリスちゃんが知ってる透、透本人も知らない透。それを知る相手として、これ以上の相手は居ないだろう?」

 言われてクリスもハッとなった。そうだ、何故今までこの考えに至らなかったのか。航であれば、本来憎むべき相手である存在を透が許せてしまった事への答えも持っているかもしれない。彼に聞けば、この胸の中に燻る不満と恐怖心の入り混じった何かを払拭出来る可能性があった。

 光明を得たと言いたげなクリスの表情から、自分に出来るお節介はここまでと判断した颯人はここで引き下がった。

「落ち着いたら、透の親父さんの所に行ってきな。そこで答えを見つければ、透とも仲直りできるかもよ?」
「あ、あぁ……えっと、あの……」
「礼は要らねえから、今は体を休めな。この後また一仕事あるかもなんだし」

 颯人に促され、クリスは談話室から出ていく。その際、少し申し訳なさを感じさせる目で彼の事を見ていた。普段彼の事をペテン師だ何だと言っていたのに、こうも真摯に悩みに向き合ってくれた事に対して感謝したいのだろう。とは言え普段が普段だから今更素直に感謝するのも踏ん切りがつかない。そんな彼女の心情を察した颯人は、感謝の言葉を求めず彼女には彼女のやるべき事があると言う理由でこの場から遠ざけさせたのだ。

 クリスが部屋を出ていくのを確認すると、颯人はソファーに思いっきり体重を預け体を伸ばしながら大きく息を吐いた。

「う、くぅ〜〜〜〜……! だはぁ〜……」
「お疲れ」
「ん、サンキュ」

 体力は消費していないが精神的に疲れた颯人に、奏が自販機のコーヒーを手渡す。市販品の特筆すべき事も無い味だが、それでもその苦さが疲れた心に癒しを与えてくれる。
 尤もこの場合、颯人にとっての癒しとなったのは何よりも奏からの気遣いだろうが。

「それにしても……」

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