蛇足三部作
『歓喜と共に再会を祝そう』
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端から滴り落ちる。
向き合う彼らから離れた所で、決着の着いた紫の大天狗と木の龍の長躯がぼろぼろと音を立てながら崩壊していく。
「――まあ、大蛇丸の縛りから逃れて二年近く問題がないままに発動していた方が、寧ろ可笑しかったとも言えるのだが」
苦笑しながら自身の胸元へと手を当てた姿を、動揺の色を隠せない紫の瞳が見つめる。
ふふふ、と生命の色で赤く染まった唇が笑声を零した。
「とうとう、追い越されちゃったか。勿体無い。もう少し楽しみたかったのに――時間切れ、かぁ」
「っ、柱間!」
悲鳴の様な声が上がる。
相手の姿が徐々に灰と化していく情景を見て、今度こそ何者にも利用などされない様に、己が痕跡の全てを世界から消滅させる気なのだと男は理解した。
その叫びを無視して、彼の人はその緑色の輝きを帯びた黒い瞳を、周囲で見守っていた人々へと向ける。
――――ゆるり、と赤い唇が弧を描いた。
「オオノキ君、君は……大事な物を取り戻した様だね」
「――っ、柱間殿! ワシは……」
「昔……会った時と、同じ顔をしている……。もう一度見る事が出来て……安心したよ」
ほぅ、と大きく息を吐いて、彼の人はふんわりと微笑んだ。
「――――な。任しても、いいかい……?」
その言葉に、何かを言いかけた皺だらけの老人の手が、空を掻く。
荒れ狂う内面の動きを抑える様に片手を堅く握りしめ、軽く一息吐いて、空を舞う翁は決然と宣言した。
「――……両天秤のオオノキの名にかけて、必ず」
「うん、期待している」
力強い輝きを取り戻した老人の眼差しが、優しい光を灯している黒い瞳をしっかりと見つめ返す。
頼りがいのある眼差しを返され安堵した様に、その人の目元が緩んだ。
――次に、黙って事態を伺っていたカブトへとその緑の輝きを帯びた黒瞳は向けられる。
「旅の途中で、木の葉の運営する孤児院に……よってね」
“孤児院”と言う単語にカブトが憑依した死人の肩が小さく揺れる。
何かを言いかけていた金の髪の少年が、風影の制止を受けて押し黙った。
「遠くに旅立った弟を……今でも、待っている青年に会った。――ウルシと言う名を、覚えているかい?」
「――っ!」
「その、様子なら覚えている様だ、な。……良かった。そう、君の……帰る、場所がある事……忘れるな、よ」
億劫そうに、その人は最後の言葉を零す。
胸元から滴る血が大地へと触れるよりも早く、それは灰と化して風に乗って飛び散っていく。
――――そうして最後に。
紫色の波紋を描いた双眸から赤い瞳へと変わっていた相手の眼差しを至近距離から見つめ返して――柔らかな微笑みをその人は浮かべた。
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