蛇足三部作
『歓喜と共に再会を祝そう』
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な身のこなしで腕を振るえば、戦場に落ちていた武具を絡めとった無数の木々が二腕双面の鬼へと怒濤の勢いで迫る。
その余波だけで大地が砕かれ、物々しい巨石があっさりと粉砕されていく光景は正しく圧巻であった。
「忍び世界最高の……そして最強の忍びと謳われた初代火影。同じ木遁使いでも、ヤマトとは比べようにならないな」
まるで自身の腕の様に自在に木々を操っては、相手を防戦一方に追い込んでいく。
流石は千の手を持つと称された一族の長なだけある。
対するマダラも負けてはいない。
紅蓮に燃え盛る炎が奔ったかと思うと、次の瞬間には木々の波を一息に焼き尽くしてみせた。
「流石、うちは最強伝説を一代で築き上げた戦国の英雄。――同じ一族内でも、彼に追い付けた実力者がどれだけ居たのやら」
炎の波が過ぎ去った後の焦土の様は陰惨の一言に尽く。
けれども地獄絵図をこの世に再現してみせた男は眉一つ顰める事無く、流れるような動きで服の袖から黒光りする杭を取り出し、標的目掛けて投擲する。
明らかに届かないはずの距離を不自然な速さで詰めた黒杭は、しかしながら標的に突き刺さる前に突如として出現した土の壁を穿つに留まった。
「全く、ちょっとオレ達が本気を出せばすぐこうだ――また地図を作り替えさせないといけないな」
「ふん。図師の心配をしている暇があれば、己の身を案じたらどうだ?」
「……ふふふ。そっくりそのまま返させてもらうよ!」
それぞれ必殺を旨とする己が攻勢を遮られたというのに、彼らがそれに狼狽える事無い。
片方は愉快そうに微笑み、片方は獰猛に笑って見せると、すぐさま攻防を再開させた。
――戦局はめまぐるしく変わっていく。
だというのに、彼らのどちらにも追いつめられた様子は浮かばない。
寧ろ、こうして再び刃を交わす事が出来たのが至上の幸福であり、この類稀なる僥倖を最後の一滴に至るまで味わい尽くさんと言わんばかりに――実に、実に楽しそうに戦っている。
「確かに……これは僕でさえ魅せられる。こんな相手の目に映って、その存在を認められたら……確かにこの上無い悦びだろうね」
小さな囁きを零したカブトの視線に気付いたのか、黒髪の麗人が目の前の宿敵から彼の方へと視線を移す。
緑色の輝きを帯びた黒瞳が、カブトを見つめて優しく細められる――どういう意図を含んでいるのかは定かではないが、敵に向けていい表情でないのは確かだ。
……ただその優しい眼差しは記憶の底に眠る養母の姿を思い起こさせて、カブトの胸中を騒がせた。
「――はは、流石に嫉妬深いね。自分以外が相手の視界に映るのは気に食わないって訳か」
一度は交錯した互いの視線であったが、迫る敵刃に対処すべく彼の人の視線はカブトから外させる事
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