蛇足三部作
『歓喜と共に再会を祝そう』
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木々の根が高速で回転する事で不穏な唸りを上げ、大樹によって留められていた二つの巨石を貫く。
削岩機と化した木々の根に砕かれた巨大な岩の破片が天より降り注ぎ、大地へとぶつかっては重々しい音を立てながら陥没していく。
「まさか! こんなんじゃ小手調べにもならないよ、っと!」
「――ハッ! いつまで減らず口を叩けるか、見物だな!!」
乱れる黒髪を気にする事無く男が吠える様に応じれば、今にも男を押し潰そうとしていた大岩が重力に逆らい、あちこちへと弾き飛んでいく。
空を飛び交う岩石が男の生み出した無数の業火によって覆われ、燃え盛る火焔を纏った巨石が戦場を飛び交ったと思えば、幾つもの水の防壁が一刹那の間に生み出される。
常人であれば擦るだけで致命傷を負って可笑しくない、正に狂気の沙汰とも言える舞台と化した戦場。
なのに、そのような障害物など存在しないとばかりに彼らは降り注ぐ岩の雨を紙一重の差で躱しては、時にはずっしりとした木々の幹で、時には纏った紫の鎧で弾き飛ばし、虎視眈々と相手の隙を狙っては必殺の術を振るってみせる。
「ふ、ふふふ! さっすが、そう来ないと面白くない!!」
「平和主義者が聞いて呆れる! 貴様も大概戦闘狂ではないか!!」
「言ってくれるなよ、好敵手殿! 自分の新たな一面にオレとて驚いているのだから!」
「――戯言を!!」
螺旋を描いた炎が縦横無尽に大地に迸って全てを灰燼と化そうと荒ぶれば、巨人の手を思わせる形状となった木々が戦場を横断して火の粉を薙ぎ払っていく。
三連の勾玉を連ねた御統が標的目がけて空を走れば、土の壁が大砲を思わせる音を上げながら地面より生じ、次いで矮小な人間を圧死させんとばかりに崩落する。
圧倒的かつ絶対的な力の応酬にして、惨烈かつ壮絶すぎる超一流の忍び同士の殺し合い――それなのに。
どちらの顔にも負の感情は見当たらない。
これ以上無いほどに楽しそうに、これ以上無く嬉しそうに、彼らは生と死の狭間を行き来する舞台の上で踊っていた。
******
「成る程……。死して尚、執着されてしまう訳だ。これほどの輝きを見せられて……黙っていられる訳が無い」
己の使役する死人に意識を憑依させたまま、術者――薬師カブトは小さく呟く。
目の前で繰り広げられる圧倒的強者達の死闘。
おとぎ話としてしか認識されていなかった、忍び世界の黎明期を生きた者達の闘いは、傍観者であろうとしていた彼の意識をも否応無しに惹き付けた。
「凄まじいな、これは……。話半分に聞いていたけど、認識を改めた方が良さそうだね」
軽やかに大地を走る黒髪の中性的な面差しの人間へと、カブトは視線を向ける。
紫炎を纏った霊器の刀を無駄の無い動きで躱しながら、その人がしなやか
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