第三章 (2)
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――それに。
「ねー姶良、ちょっと聞いていい?」
「…なに?」
「姶良のMOGMOGって、なにか特殊なメンテとか、裏技設定とかやってる?」
「強いて言えば、この間紺野さんにもらったソフトだけ…でも何で?」
「んー、私の周りでもMOGMOG持ってる子、何人かいるんだけどさ」
「MOGMOGが話しかけてくるの、姶良のだけなんだよね」
――え?
どういうことだ、それは。……他のMOGMOGは、話しかけてこない?
「そ、そうかな。ビアンキも、最初はそんなに喋らなかったよ」
僕はなるべく平静を装い、軽く受け流した。
「いつくらいから話しかけてくるようになったの?」
「んー、気がついたら…かな。情報共有とか検索とかで学習していくらしいし、個人差があるんじゃない? 柚木、あんまりネットに繋いでなさそうだもんね。…あ、そうだ」
……確かめるなら、今しかない。いちかばちかで、さりげなく話をふってみた。
「紺野さんのシリアルナンバーって、他のひとのMOGMOGとかとダブったりしないの?」
「え…」
「今後発売されるMOGMOGとダブる可能性はゼロじゃないよね。でも…」
ちらっと柚木を伺ってみる。…なんか深刻な表情で、僕の次の言葉を待っている。よし、食いついたな。
「紺野さんのことだから、シリアルに通常使われてない記号とか、ありえない羅列の仕方とかで、絶対ダブらないようにしてるんじゃないかな。…確かめてみたら?」
「そ、そうね。念のため見てみる!」
柚木はノートパソコンに向き直ると、「その他」と題されたフォルダを開けて「パスワード系」というエクセルを開いた。きっちり整理された表には、柚木が加入してるサイトの会員IDやら、プロバイダの認証パスワードやらが見やすく記されていた。…自分でやらせておいてなんだけど、そんな大事なものを僕の前でカンタンに開けてしまうなんて、なんて無用心な奴だ。ていうかパスワードがまとめてあるファイルに、馬鹿正直に『パスワード系』とか入れちゃ駄目じゃん。
「あった、これこれ!」
エクセルの下のほうに「MOGMOG ID パスワード」という項目がある。後ろ手に引き寄せた、「僕の」MOGMOGのCDパッケージのシリアルナンバーと、柚木のを照合してみる。
……僕のシリアルナンバーと、柚木のそれは、一致した……
「あー、全然普通のシリアルじゃん!これ、絶対やばいよー。…明日、紺野さんに聞いてみないと」
「明日?」
「うん。なんか今日、急に電話が入ったの。美味しいスフレご馳走してくれるって♪」
――柚木と、明日接触する?
「それと、いいソフト見つけたから、あげるって!…おニューのワンピとか着て行ったら、引かれるかな。ね、姶良」
「やめたほうがいい」
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