第三章 (2)
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か、気弱な気配さえ感じる。
…もう少し、詰めても大丈夫かな。
「…認証ページのアドレスと、シリアルナンバーだろ」
認証システムに潜り込んで偽のシリアルナンバーを追加し、何食わぬ顔で認証ページから、件のシリアルナンバーでデータをダウンロードする…。あの人、もしかして転売屋どころかハッカーとかクラッカーなどと呼ばれる類の人じゃないのか…。
「…だったら何」
あ、やばいこの雰囲気。怒り出すよ絶対。
「ん…別に。ただ…そうじゃないかなー、と思ってただけだよ。ホント謎だね、あの人」
「…口止め、されてたんだもん」
詰まった声で答えた。柚木の口元が少しゆがむ。さっきまで強気に返してきた視線も、ずっと伏せたままだ。一瞬、僕のほうが言葉に詰まってしまった。…そんな顔することないじゃないか。なんか僕が悪者みたいだ。
「…あー、まぁ、あんまりいいコトじゃないもんな!そもそも僕のせいだし…紺野さんには言わないってば。そんなことより」
今日はどさくさに紛れて少し強気に出られそうだ。僕は少し身を乗り出した。
「柚木のMOGMOGも見せてよ。僕、MOGMOG持ってるのおおっぴらにしてないから、他人の見たことないんだ」
「……いいけど」
柚木は、ためらいがちにメッセンジャーバックに手を伸ばした。しおらしげになっちゃって、さっき部屋の前で僕を待ち伏せしていた時とはえらく様子が違う。これが紺野さん効果か…なんか、また気分がいじけてきた。
「まだインストールしたばっかりだし、姶良のとはずいぶん感じがちがうかもよ」
何だかんだでほとんど抵抗なく起動する。何だ、柚木も見せたかったんじゃないか。
やがて、柚木が選んだ沖縄の海を背景に、ショートカットの活発そうな女の子が浮かび上がった。涼しげなワンピースは、とても「柚木好み」なフォルムだ。随分こだわって選んだんだろうな。手足はすらっとしていて、ボーイッシュな雰囲気。女の子は元気に手を振った。
「すずかちゃん、おかえりー!」
「すずかちゃん……本名?」
「失礼ね、ファーストネームよ!柚木鈴花!」
…ファーストネームで呼ぶ用事は永久になさそうなので、軽く流すことにする。
でもサークルの名簿作りくらいには役に立ちそうなので、一応覚えておこう。…鈴花。
「この子の名前は?」
「かぼす。かわいいでしょ」
…柑橘系で揃えてきたか…よく見ると、髪形とか、猫っぽい大きい瞳が少し似ている。横の柚木をうかがってみると、どことなくそわそわしている。
「…なんか、このキャラ柚木に似てるね」
「あっそう!? へー、自分では全っ然気がつかなかったー!」
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……嘘をつけ。言わせたかったくせに。案の定、僕の言葉に至極、気を良くした様子だ。
「…かぼすちゃん」
声をかけてみる
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