第九十五話 蚊に刺されないことその十三
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「そのうえでね」
「その実は」
「どうもね」
これがというのだ。
「処刑はね」
「してなくて」
「実際落ち延びたって話もあるし」
秀頼の息子にはというのだ。
「大野治長さんの弟さんが連れて逃げ延びて」
「そうしてですか」
「この人行方不明になったから」
大野治房という、兄とは最後仲違いをしたという。
「この人が連れてるなら」
「落ち延びていて」
「それでね」
「岸和田の方にですか」
「あそこは秀吉さんの奥さんの実家だったのよ」
木下家という、まさにその家だったのだ。
「その縁でね」
「秀頼さんの息子さんもですか」
「あそこまで連れて行かれて」
大野治房によってというのだ。
「後はね」
「素性を隠して」
「そしてね」
そのうえでというのだ。
「後でね」
「大名になったんですか」
「それで幕府も処刑したことにしたから」
表向きはだ。
「もうわかってたけれど」
「その人が実は秀頼さんの息子だって」
「もうね」
それこそというのだ。
「見て見ぬふりでね」
「やり過ごしていたんですか」
「若し本人さんが素性を言ったら」
その時はというのだ。
「流石にね」
「どうかしてましたね」
「そうだったと思うけれど」
「言わなかったので」
「それでね」
「見て見ぬふりで、ですね」
「やり過ごしたみたいね、こうしてね」
先生はあらためて言った。
「徳川幕府もね」
「無駄な命は奪っていないですね」
「だから長く続いて」
このことは統治システムは優れていたことが大きいことは言うまでもない、とだ。先生は思ったが今はそれは置いておいてかな恵にわかりやすく話すことにした。
「いい政権って言われてるのよ」
「ずっと平和で繁栄した」
「そうよ、けれどね」
先生はあらためて言った。
「鎌倉幕府は江戸幕府の半分もね」
「続かなかったですね」
「源氏なんてすぐでしょ」
将軍だったこの家はというのだ。
「三代で滅んだでしょ」
「そうでしたね」
「身内で殺し合って」
このことは源義朝の代からだ、頼朝の父の。
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