壱ノ巻
毒の粉
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もう一度、鷹男があたしの髪にくちづけようとする気配がしたので、あたしは叫んだ。
「わ、わかりました!わかりました!」
「それと、敬語もなしですよ」
「わかりました、ですからそのようにして私を困らせようとするのをやめてくださいっ!」
「『わかりました』?」
「わかった!から、やめて、鷹男!」
わかったって言ったのに、鷹男はふっと笑ってさっと髪にくちづけた。
「愛い姫ですね」
瞳をあわせてカッコいい色男に微笑まれればこのあたしもいつものようにがなりたてることもできない。
「そのままの格好では、前田家に帰るにも帰れないでしょう。衣も差し上げましょう。忠宗と俊成に心配をかけたくないのでしたら、どうぞお入りになられてください」
あたしは、改めて自分の格好を見て、頷いた。
「兄上ーーーーっ!」
「瑠螺蔚っ!?」
振り返った兄上の胸に飛び込む。
「ただいま、兄上」
「おかえり瑠螺蔚…。一体いままでどこに?っ!この傷は?髪は!?」
「あ、そんなにわかるかな?えーと、ちょっと木から落ちちゃって…」
我ながら苦しい言い訳だな…。
当然納得するわけない兄上のお説教をうけながら霊力で傷を治して貰っている中ふと、視線をずらしたあたしの目に、一人の男が目に入った。
片膝をついて静かに座っている。
………誰?
「発六郎」
「は」
兄上の声に、男が応える。
「瑠螺蔚が帰ってきたと父上に伝えてくれ。」
「は」
男は空気も動かさずあっという間に去っていく。
「兄上。あの人、誰?」
「父上が新しく雇った男だよ。無愛想で無口だが仕事はできる男だ」
「ふぅん…」
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