壱ノ巻
毒の粉
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あたしはちらりと周りを見た。家臣たちは、苦笑いであたしと鷹男を見守っている。またか、という雰囲気だ。
あ、やっぱりそうなのか…。
「鷹男、それより本物の若殿は?あたし、その人に話があるんだけど」
あたしはこそこそと鷹男の耳に唇を寄せていった。
「…本物の、若殿?」
「え?」
違うの?え、身代わりじゃないの?……て、ことは…。
あたしは、思わずまじまじと鷹男を見てしまった。
「織田、三郎宗平様…?」
肯定のかわりに、鷹男のくちびるにうっすらと笑みが浮かぶ。
う、嘘…。
「織田平脈が三男、織田三郎宗平です。前田の瑠螺蔚姫、私に用とは何でしょう」
「…さっき、あんた、いえ、貴方に言ったことと同じことをお伝えしようと思っていただけです」
あたしはふいと横を向いた。
「お騒がせしてしまい申し訳ありません。今までの御無礼を深くお詫び申し上げます…帰ります」
「怒ったのですか、姫」
「いいえ」
「声が怒っていますよ」
「いいえ」
あたしは鷹男に一礼した。
「御前、失礼いたします」
「待ってください姫。怪我をしておられる。手当てをさせましょう」
「ご命令ならば従いましょう、宗平様。私に拒否する権利はございません」
「いいえ。貴女に命令はしたくない」
「ならば従えません。では」
「姫!」
あたしはさっさと縁まで出た。その腕を、掴まれる。
「姫、何を怒っておられるのですか。私が『若殿』だと黙っていたからですか」
「いいえ。私が貴方様に対して何を怒ることがありましょうか。畏れ多い事でございます」
「敬語はやめてください」
「それはできかねます。申し訳ありませんが、ご理解いただけますよう」
「なぜですか」
「貴方が若殿で、私がその臣下だからです。ご存知であらせられましょう?」
「…」
鷹男が黙った。ちょっと悪い気がして、あたしは鷹男をちらりと見た。
でも、若殿だってことを黙ってたなんて、酷い。
鷹男に騙されてたという事実に、あたしの純粋な心はキズものよ!
「では、臣下でなければ対等に話してくださるのですね」
「…?」
「私の妻になれば、対等に話してくださるので
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