壱ノ巻
毒の粉
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んなに危険な命を授けた覚えはありませんよ」
「え、えと…あの後また、権六たちの話を聞いちゃって、それでこれは怪しいと思って、柴田家に孤児だ、雇ってくれっていって、乗り込んだのよ。そしたら何か、発が毒持って天地に乗り込んだって聞いたからさ、若殿助けなきゃって、必死で馬乗りつぶしてきたのよ。そしたら、あんたが若殿の身代わりやってるし、あたしあんま意味なかったかな、って。でもあのままだとあんたがあれを飲んでたことになるから、来てよかったわよね。悪者もみんな捕まってこれで一件落着!ね?あはは、は、はは…」
「姫。先ほど口封じに殺されそうになったとおっしゃいましたね」
「いや、でも実際あたしこうしてぴんぴんしてるし。殺されかけた、って言ってもそんな大したことには…」
「そういう問題ではないのです!」
鷹男があまりにも怖い顔で詰め寄ってくるから、あたしがごにょごにょとごまかしたら、いきなり鷹男に一喝された。
「どうしてそんな危ないことをなさるのですか!私はあなたに忘れてくださいといったはずです!何故約束を守られないのですか!何故たった一人でそんな危ないことを!」
「だ、大丈夫だって!殺されかけた、って言ってもそんな大したことなかったんだってば!ホントよ!」
鷹男はあたしの頬に手を当てた。
「大した事ない傷には到底見えませんね。女なのに顔にこんなに傷をつけて…どうするつもりですか」
ふ、っと鷹男の瞳に色っぽい光が宿って、あたしはどきっとした。
指先がゆっくりとあたしの頬の傷をなぞる。
「べ、べつにそんな、こんなあたしを嫁に貰おうなんていう度胸がある男なんていないから、別にいいのよ、別に。こんなのへいちゃらよ」
つい、そうしどろもどろに答える。
「そんなことを言ってはなりませんよ、姫。私にとっても姫は十分魅力的です…」
「わーーーっ!ちょ、鷹男!今はそんな話じゃないでしょ!?」
気がついたら、顔と顔の距離が今にも接吻できるような距離になっていた。しかも、鷹男の指はあたしの唇に触れていて、いとおしむ様にそっとなぜている。
あたしは慌てて飛び離れた。
「それでは、この話はまた今度ですね」
鷹男は残念そうに言う。
二人っきり、ってワケじゃないのに何考えてるのかしらね、この人は。いえね、別に二人っきりだったらいいとかそういうことを言ってるわけじゃないけど。もしかして、ほんとの若殿がそういう女ったらしな性格で、鷹男はそれを真似ているのかしら。
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