壱ノ巻
毒の粉
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コだったけど。
あたしは発に固く握られている提子に目を落とした。
その視線を追った発が震えあがった。
「柴田殿!?」
「このおおおおおおぉ!」
切羽詰まった声がしたと思ったら、振り返りざま背中を誰かから鷲掴みにされて体が傾いだ。
一瞬の後に、あたしは鷹男の胸に抱えられていた。
「私は」
鷹男の声が低く響いた。
「手を出すなと言ったはずだが」
刀を喉に宛がわれた男は冷や汗を垂らして頷いた。
「連れて行け」
侍従の一人が男を取り押さえて、どこかへと連れていく。
「鷹男…」
「姫。これはいったい、どういうことか説明していただけますね」
あたしははっと気がついた。
「あんたが、探ってた事って、このことなの?」
「どのことですか」
あたしがいいたいことぐらいわかっているだろうに、鷹男はあたしの傷だらけの顔を見て痛々しげに顔を顰めた。
「こんな…」
「あたしのことなんて今はどうでもいいのよ!鷹男、あんたわかってんの!?殺されるところだったのよ!」
鷹男が息をのみ、一気に場の空気が凍った。
鷹男が発をみた。発はかたかたと血の気を無くして震えている。
鷹男につられて、皆の視線が発に集まった。
「ち、ちが、違います!私ではありません!私ではっ!」
「で、あろうな」
意外な鷹男の言葉にあたしは目をむく。
何言ってんのよ!発のバッレバレの態度からしてもその提子のなかの酒だか白湯だかに毒が入れられてるのは明白じゃないの!しかもあの態度からして無関係なんてのは絶対にありえない。
「宗平様!」
発が我が意を得たりとばかりに声を上げる。
「と、当然です。私の訳がありません。私は宗平様の室です。ねぇ宗平様、はやくそのわけのわからないことをわめく小汚い女を殺してくださいな」
「道重も娘を使うなど、心ないことをする」
「…え?」
突然自分の父の名が出てきて発は茫然とした。追い打ちをかけるように鷹男の声がかかる。
「連れて行け」
「は」
「な!?無礼ものっ触るでない!私は、私は柴田権六道重が娘、発であるぞ!無礼ものっ!宗平様っ
私をお疑いになるのですか!その女の言うことを信
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