第3部
ジパング
オロチの生け贄
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が、おそらく誰も信じていないでしょう。なぜなら他の人たちもまた、私と同じように考えているからです。実際本当は娘なのに男として育ててたり、生け贄に選ばれた途端、遠くの村へ引っ越したりしてましたから」
『……』
その事実に、私を含め四人は絶句した。
いくら国のためだからといって、なぜ幼い少女が犠牲にならなければならないのだろう。少女だけではない。その家族も、少女を失った悲しみを背負わなければならない。そんな理不尽な世界を作り出したオロチに対して、私はふつふつと怒りが込み上げてきた。
「なんで、この国の女の子たちはそんな目に遭わなきゃならないんですか? オロチを何とかしようとする人はいなかったんですか?」
私の問いに、ヒイラギさんはさらに落胆した顔をした。
「この国にはオロチを倒せるほどの戦いに秀でた者などおりません。それにヒミコ様の教えが全てですから。なので弱い私たちは、ただ黙って身代わりとなった娘の行く末を案じるしかないのです。ですが……」
一瞬の間を置いた後、ヒイラギさんはユウリの方をちらりと見た。目を合わせたユウリも何かを察したようだ。
「今日ユウリさんたちに出会って、考えが変わりました。お願いします。どうか娘を連れて行ってくれませんか?」
「!?」
「お母さん!?」
母の無情な言葉に、ヤヨイさんは愕然とした。
「ヒイラギさん、オレたちは魔王を倒す旅の途中なんだぜ? 戦えないヤヨイちゃんは連れていけねえよ」
「わかっています。ですがこうするしかヤヨイを生かす道はないんです」
ナギのもっともな指摘に、ヒイラギさんはすがるような眼差しで私たちを見つめる。その言葉には、例え一生離れ離れになっても、ヤヨイさんには生きていて欲しいという、ヒイラギさんの強い願いがひしひしと伝わってくる。だけど……。
「随分と勝手だな。俺たちに丸投げするってことか」
ユウリの目は冷ややかだった。それを感じ取った当事者のヤヨイさんは、おろおろしながら成り行きを見守るだけで精一杯のようだ。
ヒイラギさんの気持ちもわかるが、私たちには魔王を倒すという目的がある。ヤヨイさんも連れて行くにはさすがに無理がある。それを一番感じているのは、リーダーであるユウリに他ならない。
「ここにいたら、ヤヨイは幸せにはなれません。お願いです、ユウリさん……!!」
「……」
そう言うとヒイラギさんは、それでも顔色を変えないユウリに泣きすがった。
「お願いです、どうか……、うっ、ううっ……」
彼女の悲痛な叫びが、室内に細々と響き渡った。
すると、たまりかねたヤヨイさんが、ぼろぼろと涙を溢しながら母であるヒイラギさんに抱きついて口を開いた。
「嫌だよ、お母さん!! 私、お母さんと離れたくない!!」
泣きじゃくる彼女を、ヒイラギさんは苦悶の表情を
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