第3部
ジパング
オロチの生け贄
[4/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
いと、とある提案をしたのです」
「なあ、話の腰を折るようで悪いけど、『ヒミコ様』っていったい誰だ?」
疑問に思った私が尋ねるより先に、ナギが口を挟む。
「ヒミコ様はこのジパングの国を統べるお方です。他の人にはない異能を身につけており、その力で結界を張ったり、私たちを守って頂いてくれる、とても民思いのお方なのです」
その言葉に私は、昨日初めてこの村に入った時のことを思い出した。
「そう言えば村に入るときに、村の真ん中に一軒だけものすごく大きな家が建ってたけど、ひょっとしてあそこにヒミコ様が住んでるの?」
「はい。ここジパングは代々異能を持つ人間がこの国を治める決まりになってまして、ヒミコ様も元々この村の巫女でした。ヒミコ様のおられるあの神殿も、ずっと昔からあったものなんですよ」
「村の巫女だった奴が統治者なのか。まあ、そう言う国はないこともないが、随分と珍しいな」
どこか含みを持った言い方で、ユウリが言う。シーラの故郷であるダーマも国とは少し違うそうだが、あそこ一帯の土地は彼女の父親であるダーマの大僧正が管理しているらしい。そんな場所は極めて稀なことのようだが、ダーマ以外にもそんな国があることは驚きだ。
「話を戻すけどさ、そのヒミコ様が言ってた『提案』ってひょっとして、生け贄を差し出すってこと?」
『!!』
シーラの言葉に、ユウリ以外の皆が驚愕した。もっともヒイラギさんとヤヨイさんは、シーラがヒミコ様の提案が何なのかを言い当てたことに驚いているようだったが。
「そ、その通りです……。年に一度オロチに若い娘を差し出せば、村を襲うことはないとヒミコ様からお告げがありました。実際お告げ通り生け贄を差し出したら、その年はオロチに襲われることはありませんでした。それから今まで十余年、村の習わしに従った結果、今でもオロチの脅威は訪れていません。……ですが、ひと月前にヒミコ様から賜ったご神託によると、次のオロチの生け贄は、娘のヤヨイだというのです」
当の本人を見ると、彼女は『生け贄』という言葉に反応したのか、蒼白になりながら歯をカチカチと震わせた。
「村のためを思えば生け贄を差し出さなければならないのはわかっているんです。ですが……いざ自分の娘を魔物に差し出さなければならないとなると、胸が張り裂けそうで……」
さめざめと泣くヒイラギさんの悲しみが、私にも痛いほど伝わってくる。
「そんなの、子供を持つ親なら当然そう思います」
ヒイラギさんが涙ぐむ姿を見たら、カザーブにいるお母さんのことを思い出して涙が溢れてきた。自分が産んだ子供を魔物に殺されるのを分かって差し出さなければならないなんて、そんなの辛すぎる。
「なので私は、すぐにヤヨイを世間の目に触れないようにここに隠しました。周りにはヤヨイは川に落ちて行方不明だと触れ回りました
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ