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俺様勇者と武闘家日記
第3部
ジパング
オロチの生け贄
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、私以外の人と接するのが苦手なのです」
「まさか普段から壺に入って生活しているのか?」
「……は、はい」
 ユウリの問いに、恐る恐る頷くヤヨイさん。いや、怖がってはいるが、その割にはユウリのことをチラチラ見ているように見えるのは気のせいだろうか。
「どういうことだよ? これじゃあまるでヤヨイちゃんを隠してるみたいじゃねえか」
 ナギが不審そうにヒイラギさんに詰め寄る。だがそう指摘さればつが悪そうにしているヒイラギさんを、ヤヨイさんは庇うように前に出る。
「お、お母さんは何も悪くないんです! お母さんは、私をオロチの生け贄にさせないために、私をここに隠してるんです!」
「オロチの生け贄……って何?」
 私が尋ねると、ヒイラギさんはびくりと肩を震わせた。別に驚かすつもりはないのだが、彼女にとってはその言葉を聞くだけで反応してしまうのだろうか。
「……話せば長くなりますので、一度家に戻りましょう」
 ヒイラギさんはヤヨイさんと私たちを引き連れ納屋を出ると、再び家へと入っていった。



「『オロチ』と言うのは、この国でもっとも恐れられている魔物なのです」
 ぐつぐつと煮立った鍋から湯気が立ち上る家の中は、熱気と温かさに包まれていた。
 車座になってイロリを囲む私たちに、ヤヨイさんは一人づつ鍋に入った独特な色の野菜のスープなどをよそってくれた。
 その他にも、炊きたてのお米に焼き魚、それと――初めて見る食べ物だが――発酵した野菜を切って盛り付けた『ツケモノ』という料理を用意してくれた。かじるとカリカリと小気味よい音が口の中で鳴り、噛めば噛むほど野菜のうまみと塩味が広がってくる。ナギとシーラは微妙な顔をしていたが、私とユウリは特に気にすることなく普通に食べた。
 そんな未知の料理に舌鼓を打ちながら、私たちはヒイラギさんの話に耳を傾けていた。
「そんなに凶暴な魔物なのか?」
「ええ。今から十数年前、オロチはこの村の近くに突然現れて、村人たちを次々と食い殺していきました。その咆哮は人間のみならず獣や他の魔物を脅えさせ、吐く息は炎となって大地を焼きつくし、鋭い牙はいかなる生き物も一瞬で切り裂きました。当時は周辺の村はほとんどオロチによって滅ぼされたと聞きます」
「そんな……!」
 沈痛な面持ちのまま話すヒイラギさんに、私は思わず箸を止める。故郷の村でもかつて魔物に襲われ、私と同じくらいの年の子たちが殺されたからだ。
「だからこの村には魔物避けの結界が張られていたんだね。でも、そんなにヤバい魔物なら、あの程度の結界じゃ防げないと思うよ?」
 シーラの問いに、ヒイラギさんは意外そうに顔を上げる。
「ヒミコ様と同じことをおっしゃられるのですね。そうです、この村の結界はヒミコ様が張られているのですが、それだけではオロチの脅威は防げな
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