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イベリス
第百十六話 交番に寄ってその一

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                第百十六話  交番に寄って
 咲は黒砂糖を入れたコーヒーを飲み終えてマスターに笑顔で話した。
「黒砂糖もです」
「よかったかい?」
「はい、美味しかったです」
 笑顔で答えた。
「本当に」
「それは何よりだよ、何でもな」
「試してみることですか」
「ああ、黒砂糖を入れてもな」
 コーヒーにというのだ。
「いいって聞いてな」
「やってみたんですね」
「チャレンジしてみるのもな」
「いいんですね」
「失敗したらそれまでだよ」
 笑ってこうも言うマスターだった。
「止める、けれどな」
「それでもですね」
「それで成功したらな」  
 それならというのだ。
「続けてみるんだよ」
「そうですか」
「だからな」
 それでというのだ。
「今だってな」
「やってみたんですね」
「ちょっとしたことだけれどな」
「黒砂糖も使うことは」
「ああ、一回家族で飲んでみたんだよ」
 黒砂糖を入れたコーヒーをというのだ、砂糖を入れているお店の小さなケースの中には角砂糖ではなく黒い欠片の砂糖が入っている。
「それでよかったんでな」
「お客さんにもですか」
「出したんだよ、それでお嬢ちゃんにもな」
「出してくれたんですか」
「そうだよ、お砂糖は白砂糖もあってな」
 咲に笑って話した。
「黒砂糖もな」
「ありますね」
「元々は黒砂糖だったんだよ」
 マスターは咲にこのことも話した。
「お砂糖は」
「白くする技術が出来て」
「それで白砂糖も出たんだよ」
「確か日本では徳川吉宗さんから」
 咲は徳川幕府第八代将軍の名前を出した、時代劇でも知られている徳川将軍の中でもかなり有名な将軍である。
「はじまりましたね」
「ああ、あの人からだよ」
「そうでしたね」
「お米で有名だけれどな」
 その為米公方とも米という字を分けて八十八将軍とも呼ばれた。
「薩摩芋の栽培認めて広めてな」
「そのことでも有名な人ですね」
「それでだよ」
「白砂糖も認めたんでしたね」
「お米に薩摩芋にお砂糖ってな」
「甘いものに縁がある人でしたね」
「そうなんだよ」
「面白い人ですね」
「元々は紀州藩でな」
 この藩の藩主であったのだ、四男だったが兄達が次々と早世して彼が藩主となったのである。このことについて何かあるのではという説もあるという。
「あそこは蜜柑だろ」
「蜜柑も甘いですね」
「だからな」
「甘いものと縁のある人ですね」
「そうなんだよ」
「それは意外ですね」
「ああ、それで元はな」
 マスターはあらためて話した。
「お砂糖はな」
「黒砂糖ですね」
「そうだったんだよ」
 またこのことを話した。
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