第二章
[8]前話
「海中時計みたいにして」
「使われていますか」
「腕時計は今も働いている人には必要だけれど」
それでもというのだ。
「その場所はね」
「それぞれですか、それで」
武藤は眉月のこれまでの話を聞いてから彼女にあらためて言った。
「その時計はどんなのですか?」
「これよ」
眉月は武藤に応えすぐにスーツのポケットから腕時計を出した、その時計はというと。
彼が持っているものと同じスイス製だった、だが彼が持っているものより高価なもので彼もかなり驚いて言った。
「凄い時計ですね」
「奮発したわ」
眉月も微笑んで答えた。
「だから私の宝物よ」
「そうなんですね」
「けれど手首に付けていると気が散るから」
だからだというのだ。
「ポケットに入れているのよ」
「そうですか」
「そしてね」
そのうえでというのだ。
「時々時間を見るわ」
「僕の時計もスイス製ですが」
「知ってるわ、見てわかったわ」
にこりとしての返事だった。
「宝物でしょ」
「はい、僕にとっては」
「大事にしてあげてね、それでね」
「時計もですね」
「それぞれの持ち方があることはね」
「同じスイス製の宝物みたいなものでも」
「あるのよ、何でもないことだけれど」
それでもというのだ。
「覚えておいてね」
「何でも人それぞれですね」
「そういうことよ」
武藤に笑顔で言った、そして彼女は腕時計は持っていても手首には付けないでいた。ポケットに入れて時々そこから出して見て使うのだった。
スイス製の時計 完
2023・9・15
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