第二部 1978年
迫る危機
危険の予兆 その5
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も、こうした非常時に立つと、日頃の顔色もない。
「とにかく、米国一国では止むおえん場所だ」
といううめきが、教授の唇から出たとき、二人はもう一度、胸を衝つかれた。
だが、教授は、その太い眉をもって、うろたえるな、と叱るように二人を睨んだ。
「涼宮君」
「はい」
「君は、日本政府筋にこのことを伝えたまえ」
涼宮は、これ以上の情報収集が出来ないと考え、一足先に研究室を後にした。
東ドイツ大使にあてた書状を、したためるしかあるまい。
そう考えた教授は、机に座ると、早や便覧に筆を走らせ始めた。
「ベルンハルト君、本当にいいんだな」
教授の顔が途端に鋭くなる。
精悍な顔つきをしている為に、かなりの迫力が漂った。
「これは日米同盟という、安全保障上の問題だ。
だが、失敗したら、東ドイツも共倒れだ」
「はい。分かっております」
そういって、恭しく大使へあてた手紙を受け取った。
内心の不安を覚えつつも、ユルゲンは笑みを浮かべながら答えた。
『唯一の勝算は……、味方が天のゼオライマーである事か……』
さしものユルゲンも、そう思わざるを得なかった。
ブレジンスキー教授から、一報を聞いたユルゲンの行動は早かった。
即座に車を手配して、マンハッタンにある東ドイツ代表部に駆け込んだ。
ユルゲンは、その手紙を携えて、大使公室を尋ねた。
詳しい内容を伝えると、公使は、
「ベルリンは何時だね」と尋ねてきた。
ユルゲンは腕時計を見て、
『ニューヨーク・ベルリン間の時差は6時間』
と時間を計算した後、
「いまは午前4時になります」
その朝、木原マサキは、早暁から台所を借り、朝餉などを作っていた。
不意に、日本食が食べたくなり、飯を炊き、鮭を焼いている所だった。
本心を言えば、緊張の為、まったく寝付けなかったのだ。
マサキは、鉄人ではなかった。
普段の振る舞いと違って、非常に繊細な男であった。
仮初とはいえ、結婚式を挙げた興奮もあろう。
それよりも彼の心を悩ませたのは、着陸ユニットの接近であった。
いくら素晴らしいマシンがあっても、地球上に再び着陸されたらやりようがない。
超マシンで巻き返そうにも、建造するための原材料や、兵站を維持できなければ、無意味なのだ。
今ここでもたもたしていたら、取り返しのつかないことになる。
鉄甲龍を倒した時も、躊躇なくやっていれば、日本本土への被害は防げたろう。
幽羅を、八卦ロボを誘い出すためとはいえ、米海軍第七艦隊の損失は割に合わなかった……
前世の失敗を、今更ながら悔いていた。
マサキの意識は、若い女の声で現実に戻される。
まもなく、寝間着姿のベアトリクスとアイリスディーナが来た。
「木原、木原は
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