第二部 1978年
迫る危機
危険の予兆 その5
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究所の教授でもあった。
教授は研究室に入るなり、応接用の椅子に腰掛ける二人の青年に声をかけた。
「涼宮君、ベルンハルト君、待たせたな」
「いいえ……」
大統領補佐官の助手として涼宮宗一郎とユルゲン・ベルンハルトが呼ばれていた。
この事は、日本にとって、マサキにとって幸運だった。
「大詰めに来て、余計なことに頭を使わされる」
「ソ連がロケットの準備態勢に入っていることはわかっているが……
まだ、どの程度の規模の攻撃を行うか、判ってはおらん」
「判明しているのは、大型ロケットを打ち上げ地点だけだ」
「場所は、スヴォボードヌイ」
このとき、ユルゲンの眉に、一瞬の驚きがサッとかすめた。
涼宮の手から地図を奪い取ると、
「涼宮さん、もう一度名前を言ってくれ」
「スヴォボードヌイだが……」
ユルゲンの想いは、確信に変わった。
「スヴォボードヌイ……やはりか。
俺は、前にこの基地に関して、聞いたことがある」
スヴォボードヌイとは、中ソ国境を流れるアムール川支流、ゼヤ川中流の右岸にある都市。
アムール州州都のブラゴヴェシチェンスクからは北へ1670キロの場所にある。
1930年代には第二シベリア鉄道の建設の為、大規模な収容所群がこの地に設けられた。
同市の50km北方には、閉鎖都市ウグレゴルスクがあった。
この町は1961年にソ連軍のミサイル発射のために作られた町。
1969年以降、「スヴォボードヌイ18」という暗号名で呼ばれた。
町の中心から5キロの場所にシベリア鉄道の支駅、レデャーナヤ駅があり、軍事物資の搬入も可能であった。
「俺がまだ駆け出しの軍人で、モスクワに留学中の話だ。
ソ連のロケット学者から、この場所の話を直に聞いた」
涼宮は口元をゆがめ、驚愕の表情でユルゲンを見やった。
「ロケット学者!」
「クビンカ基地で、歓迎パーティーが開かれた時だ。
ソ連の人工衛星コスモス1号の打ち上げが話題になったのが、記憶に残っている」
そういって冷徹な一瞥を、教授と涼宮にくれる。
「その時は確か、シベリアの原野に、秘密都市が建設されていたという話を耳にした。
それも、日本とも関係の深い極東、シベリアにあるミサイル基地だった」
教授の鋭い目が、ユルゲンの端正な顔立ちに、くぎ付けになった。
「男子、三日会わざれば刮目して見よ」との諺通り、しばらくぶり会うユルゲンは、以前に比べて頼もしく感ぜられた。
「秘密都市……」
感情を押し殺した声で告げると、脇にいる涼宮の方に向き直った。
「それが……今は宇宙ロケットの発射基地か」
涼宮は無表情で答えた。
三名の顔は、同じものだった。
不安に塗りつぶされたのである。
いかに勇猛な者とはいえど
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