第二部 1978年
迫る危機
危険の予兆 その2
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様に、一斉に口を開く。
「かもしれません。
でも国際政治とは、常に変化するものです、生き物ですよ。
少しでも現実に即したものを選ばなければ、我が合衆国は、時代に取り残されてしまいます」
「我らにとって、黄色い猿の科学者、そして彼の作った超マシン……百害あって一利なしだ」
長官は瞋恚もむき出しに、机から立ち上がった。
無敵の存在であるゼオライマーが失われれば……
BETA戦争はまた、かつてのように凄惨な結末を迎える。
その様な懸念を抱いて、彼らに反撃したのだ。
「皆まで言うのか……。
宜しい!ならば私も言わせていただこう。私は辞めぬぞ」
赫怒のあまり、机を何度もたたく。
「諜報機関の長として、守らねばならぬのは、君たちだけではない。
合衆国を支える、2億の民を思えばこそ、職責を全うせねばならん。
その様に、決意を新たにした」
しかし、誰もが一瞬、その面を研いだだけで、しんとしていた。
来るべきものが来たという悽愴な気以外、何もない。
「残念ですな……
中間選挙の結果が開票される前に、辞任していただきたかったのですが……」
「明日も早朝からの閣議があるので、失礼させてもらうぞ」
長官は、きつい口調でそのように告げると、背を向けて逃げるようにして、その部屋を後にした。
彼にできることは、ドアを勢い良く閉める事だけだった。
CIA長官が去った後、会議室の中は冷たい笑いに包まれていた。
上座の男は、パーラメントの箱から、タバコを抜き出すと、紫煙を燻らせ、夜景を覗いた。
ビルの最上階からは、壮大な絵画の様な、精緻で眩い夜景が広がっている。
他の男たちは、肩を揺すって笑い、そして、二言三言囁き合っていた。
「あのバカ者は、別といたしまして……」
「木原という黄色猿はどうしますか」
「しかし、まったく不可能とされたハイヴ攻略を単独で成し遂げるとはな……」
「パレオロゴス作戦の参加……
活躍させない為の、無理難題であったのにな。
おかげで日本政府まで、奴を重視し始める結果になった」
「しかしあれだけの行動ができる男を失うのは、惜しいがね……」
上座の男は、初めて強い調子で答えた。
「自分で行動のできる猿などいらぬ。
主人の言う事を聞く有能な猿が欲しいのだよ」
「なるほど」
「で、どういう筋書きで……」
「心配はありません。
月面偵察にかこつけて、機械もろとも、宇宙の海の藻屑にするつもりです」
上座の男は、つい微笑を持った。
「黄色い猿の見る夢など……、この世界にはなかったと言う事か」
地上のハイヴ攻略はなった、この上は危険なゼオライマーと木原マサキは消えてもらう。
彼の腹はできたのである。
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