暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第二部 1978年
迫る危機
危険の予兆 その2
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すか。
10年前のサクロボスコクレーターでの、接触事件以来……
ただ、月面がどうなっているかわからないのですよ……」
 その先を言うか迷った。
出過ぎたことをしゃべって、彼の逆鱗に触れたら、大変だ。
「簡単な事だよ。
降下作戦が始まるまでに候補に挙がっている月面のハイヴ全てを破壊すればいいだけだよ」
「エッ」
「それが帝国に対する米国のやり方なのだよ」
 そこで、御剣は口をつぐんでしまう。
彩峰は受話器を握りながら、相手の反応を待った。

 御剣は口を開くなり、受話器の向こうに問わせた。
「木原はどこにおる」
「いずれも、まだ確かなるところは」
彩峰の手元にも、まだ的確な情報はないような返答だった。
「では……木原を探し出しまいれ」
御剣は、彩峰にいいつけ、それも、
「ニューヨーク時間の月曜午前8時までに」
と、時を()った。
「了解しました」
 受話器を置くと、彩峰は、窓の向こうの、夕闇に染まり始めたボンの街並みを見つめた。
(『赦せ、木原。これが薄く汚れた政治の世界の現実なのだ……』)
権力者の手の上で踊らされる一人の青年の身の上を、人知れず涙していた。



 同じころ、CIA長官といえば。
マンハッタン島中心部にあるセントラルパークの近隣に、こじんまりとした建物があった。
その建物こそが、米国の内政外交に影響を与える奥の院、外交問題評議会本部である。
 最上階の会長室では、数人の男たちが集まり、今密議が凝らされていた。

「私にCIA長官をやめろというのですか」
CIA長官の問いを受けて、上座にいる男が顔を上げる。
「このあたりで考えてみては、どうですかと……。
ご相談しているのです」
「今のは退職勧告と同じではないか、私にはそう聞こえますが!」
 別な男が、口つきの紙巻煙草をもてあそびながら、長官をにらむ。 
「はっきり言おう。我々はゼオライマーの活躍を支援する君を……
いや、今後もそんな主張をする君を今後も支持するわけにはいかんのだよ」

「そこまで聞いて分かったぞ」
と、たまりかねたように、長官は言った。
「副大統領をそそのかし、G元素獲得工作を進めているのは君たちなのだね」
「長官、我々がゼオライマーを、木原マサキを支援してきたのは……
BETAの進行によって、経済活動が立ち行かなくなる懸念が増大してきたことへの不安だったのです」

「だが、状況は大きく変わった。地球上にあったハイヴは消滅した。
脅威であったソ連はBETA戦争で国力が疲弊し、コメコン諸国も西側との連携を模索し始めている」
「そんな事で、本質は変わってはおりません。
BETAはまだ月と火星におるのですよ!」
 
 はなはだしく不快な顔をした男達は、興奮する長官を責め立てる
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