第二部 1978年
迫る危機
危険の予兆 その2
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う途方もない手段を思いついたようです」
御剣は、CIA長官の発言にほとほと感じ入った様子で、
「なんと……」
脇にいた次席公使も驚きの声を上げる。
「それは初耳です」
「実は」
と、CIA長官は注意深く、大使館の周囲を覆う竹林の外を見て。
「G元素の反応を利用した機関を乗せた大型攻撃機を月面に近づけて、地表で炉を暴走させる計画なのです」
長官は口を切った。
御剣はうなずいた。――大いに聞こうという態度である。
「NASAによりますと、着陸ユニットの発射源は月の静かの海にあると言う事です。
クレーターを抉り、地下に建設されたハイヴらしく、空爆やミサイル攻撃による損害を与えることは難しく、特殊作戦は不可能と結論がなされました」
御剣は息を内へ飲んだ。
「つまり正攻法で行くしかありません。
合衆国は国家の命運をかけ、相当の損害を覚悟のうえで、大規模な月面降下作戦を実施する事にいたしました」
「実施時期は……」
「ロケット燃料充填や人員の確保、月面の温度が上昇を勘案しますと、早くとも半月後になります。
詳細は追って、連絡いたします」
CIA長官は席から立ちかけて、
「大統領閣下からの伝言でありますが、貴国には、ぜひ、ゼオライマーの作戦参加をとのことです」
御剣はひとみを正した。
長官の終りの一言によってである。
男は、それを猛烈な反駁の出る準備かと覚悟した。
今回の依頼が、無理を承知の上でしていたからである。
「わかりました」
案外、御剣は、幾度も大きくうなずいた。
決して、軽々しくではない。歎息して言った。
「元帥府、内閣との検討の上に可及的速やかに返答を申し上げましょう」
御剣も同意の色を満面に見せた。
「よろしくお願いします」
男は、御剣に深い礼をした後、静かに部屋を後にする。
迎えに来た屈強な護衛たちと共、に車でマンハッタンの町へ去っていった。
CIA長官が帰って間もなく、執務室から人払いをした御剣は、大急ぎ電話を掛けた。
既に米国ニューヨークは昼下がり、6時間先の西ドイツのボンは夜の時間帯になっていた。
「御剣だ。大使館付武官補佐官に連絡して、訪独中の彩峰大尉を呼んでくれ」
それから5分ほどもすると、電話は彩峰につながった。
「御剣閣下、彩峰です。火急の要件とは……」
「木原は、どこにいる……」
「ゼオライマーを出撃させろと、いうんですかッ」
彩峰は御剣の問いかけを聞いて、本音を漏らした。
いや、口に出せない感想もまだあるのだ。
「まぁ、聞いてくれ。
先ごろ、米国のNASAで月面から異様な飛翔物の発射を確認した。
それに対応するために、近々米軍の降下部隊を送ることが決まった」
「じゃあ、どうやって安全な場所に送り込むので
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