第二部 1978年
迫る危機
危険の予兆
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えず、BETAの攻撃に踊らされず、出来るだけ多くの情報を収集したい」
整然と並べられたタバコを端から掴んで、口にくわえる。
ジッポライターで、炙るように火をつけた後、悠々と紫煙を燻らせた。
男は、咽頭を通じて伝わる結晶ハッカ油に、心の安らぎを求めた。
その様を見た副官は、所長の愁眉を開かせようと、
「任せてください」と、力強く答えた。
その頃、東ドイツにいるマサキたちといえば。
議長専用のリムジンに、マサキも厚い羅紗のダッフルコートにくるまりながら、同乗し、ベルリン近郊にある、高級幹部専用の住宅地に向かっていた。
この場所は、ヴァントリッツと呼ばれていたが、実際は違った。
ベルリン郊外のの村落ベルナウ・バイ・ベルリンにあり、ヴァルトジードルングと呼ばれていた。
ミッテ区からA11号道路を40キロほど進んだ場所にあった。
「私が提案した条件は、飲んでくれるのかね」
ソ連製大型リムジン、ジル(ZIL)114型の中で、議長は紫煙を燻らせながら訊ねてきた。
「ああ、まあ……なあ」
籍を入れなくてもいい、アイリスディーナと式を挙げてほしい。
形だけの人前式を上げてほしいというのが、条件だった。
移動時間は40分程度なのだから、それに合わせて返答してほしいという要求だった。
後部座席はミラー加工された窓ガラスに変えられ、外から見えなくなっているとはいえ、運転手の存在が気になった。
黒いスーツに、レイバンの黒縁のサングラスをかけた寡黙な男。
屈強な体つきと見あげるばかりの背丈から、如何にも軍人然とした風貌だった。
「大丈夫だ。運転手は俺が議長になる前からの長い付き合いの男だ。
口は堅いし、こういう事には慣れっこだ」
議長の言葉に、マサキは、何で今さらといわぬばかりな顔していた。
いきなり人前式の話を持ちだされて、マサキは焦った。
義理の親とは言え、妙齢の娘の先行きを気にする気持ちはわかる。
マサキも、アイリスディーナとの同居することには意義はない。
だが、その身分が問題になった。
アイリスディーナは、国家人民軍陸軍少尉。
BETA戦争の為、2年早く繰り上げ卒業をしたとはいえ、士官教育を受けた現役将校。
いくら東ドイツがOKしても、日本政府が許すわけがない。
外国人との結婚は、その後の進路ばかりか、マサキの日本国内での立場を危うくしかねない。
ミラと結婚した篁と違い、マサキには、爵位も、後ろ盾もない。
武家でもない、この世界では根無し草のマサキにとって、外人との結婚は自殺行為だ。
前の世界の自衛隊の様に、この世界の帝国陸海軍は外国人との結婚には甘くない。
もっとも、陸海空の自衛隊、海上保安庁、警察消防、公安調査庁等々……
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