第九十四話 暦のうえでは秋だけれどその十一
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「木の上からね」
「豹が襲ってきて」
「それでよ」
「大怪我ですか」
「助かったけれどね」
それでもというのだ。
「本当にね」
「大怪我で」
「大変だったのよ」
「そうしたことがあるんですね」
「あるわよ、アフリカだと」
先輩は一華に話した、それも素っ気なく。
「冗談抜きでね」
「だから怖いんですね」
「アフリカの自然はね」
「そうですか」
「風土病だってあるし」
「さっきそちらもお話してくれましたね」
「これも怖くて」
それでというのだ。
「注意しないとね」
「死にますね」
「だから欧州から心ある人が来てくれて」
植民地時代である、そうして多くの命を救ったのだ。植民地統治の是非は兎も角としてそうした人がいたことも事実である。
「苦労してきたのよ」
「シュバイツァーさんとかですね」
「そうよ、日本にはそうした風土病もないしね」
「日本脳炎はありますけれど」
一華は先輩と共に走りつつ話した。
「予防注射ありますしね」
「蚊に刺されてなるわね」
「はい、日本脳炎は」
「それはあるけれど多くないでしょ」
「風土病も」
「赤痢とかも流行りにくいし」
これは衛生概念や医学というよりも自然環境によるところが大きい。
「川の流れが急でね」
「そのせいで、ですね」
「お水も奇麗でね」
「そのこともあって」
「赤痢とかも流行しにくいし」
「そのこともいいことですね」
「日本の自然は快適よ」
先輩は言い切った。
「本当にね」
「それでそこに過ごせたら」
「それだけでね」
まさにというのだ。
「幸せよ」
「そうですか」
「猛獣が少なくて風土病もそうで」
そうしてというのだ。
「四季それぞれが快適だから」
「暑過ぎず寒過ぎず」
「だからね」
それでというのだ。
「本当にね」
「日本で過ごせるなら」
「それだけでね」
「幸せなんですね」
「豹にも襲われないし」
先輩はまたこのことを話した。
「いいわよ、ただね」
「ただ?」
「災害が多いのは」
このことをまた言うのだった。
「ちょっとね」
「困りものですね」
「戦争より怖くない?」
災害はというのだ。
「地震とか」
「そうですね」
一華も否定せず答えた。
「言われてみると」
「そうよね」
「急にズシンときますからね」
地震を想定してこう言った。
「それで何もかもが壊れますから」
「この神戸でもあったし」
「新潟でも熊本でもありましたね」
「東北でもね」
「東京なんか」
一華はこの街の話もした。
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