第百十五話 知りたいことその七
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「そういうことか」
「そうなります?」
「そうじゃないか?」
こう咲に言うのだった。
「それってな」
「だから未完にしてもですか」
「別にだよ」
「気にしないんですか」
「だからだよ」
それが為にというのだ。
「そのままなんだろうな、けれど一旦書いたりしたらな」
「その時はですか」
「終わらせないとな」
そうしないと、というのだ。
「駄目だろ」
「そうですか」
「倫理観だな」
「書く人の」
「そう言ったら言い過ぎかも知れないけれどな」
それでもとだ、マスターは咲に話した。
「そういうのってあるだろ」
「世の中には」
「その人がプロであるなしに限らずな」
「小説家の倫理ですか」
「それがあってな」
それでというのだ。
「一旦書いたらな」
「漫画でも同じですね」
「そうだよ、同じだよ」
「そうですか」
「やっぱり完結させないとな」
一旦書いたならというのだ。
「駄目だろ、まあ終わらせ方もな」
「あっ、何かです」
終わらせ方と聞いてだ、咲は言った。
「無茶苦茶な終わらせ方する漫画家さんいます」
「終わらせるにしてもか」
「もう作品世界を滅茶苦茶に壊す様な」
世の中そうした漫画家も存在しているのだ、数多くの作品を描いてもまともに終わった作品が殆どなかったりするのだ。
「そうした漫画家さんいます」
「まあそれでもな」
マスターは咲のその話を聞いて言った。
「終わらせるならな」
「いいですか」
「まだな」
「終わらせるならですね」
「本当にな」
それはというのだ。
「それだけで全く違うよ」
「そうですか」
「だからな」
それでというのだ。
「例えそうでもな」
「終わらせるだけましですか」
「そうだよ、未完よりもな」
「どんな終わらせ方でもですね」
「いいんだよ」
「そうですか」
「ああ、ただ作者さんが急死したりな」
マスターはこのことは残念そうに話した。
「それで未完はな」
「どうしようもないですね」
「ああ、人間何時何があるかわからないからな」
「今日は元気でもですね」
「明日はわからないからな」
そうしたものだからだというのだ。
「それでだよ」
「急死とかですね」
「あるからな」
だからだというのだ。
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