暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第二部 1978年
迫る危機
危険の予兆 その3
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党の重役につながる人間は、優先された。
 自家用車の所有が厳しく制限されていたソ連では、人口の54人に一人が、一台の車を持っていたのに対して、党幹部たちは個人用の自家用車を好きなだけ買えた。
 1970年代の指導者であるブレジネフは、ジルやボルガといったソ連製の高級車の他に、複数の外車を所有した。
 東ドイツのホーネッカーもその顰に倣って、めぼしい高級車を買いあさった。
特にお気に入りだったのは、フランスのシトロエンのCXという高級セダンであった。

 幹部用のスーパーや特別な牧場や専用農場も、あった。
東ドイツのそれに関して言えば、西ドイツの商業スーパーとそん色のないものが並び、新鮮な柑橘類と野菜が年中手に入った。
だが、それでも西ドイツの中流家庭、日米の一般家庭の水準であった。

 社会主義の優等生として知られている東ドイツは、対外的に消費の平等を打ち出していた。
住民の不平不満を抑えるために、ホーネッカーはそのことに細心の注意を払うほどであった。
1970年には、リーバイスのジンーズを1万2千本輸入して、国営商店に並べたりもした。
 しかし、その利益の恩恵を受ける人々は、わずかであった。
社会的立場によって、耐久消費財や一般雑貨、食料品など、得られる機会が限られていた。

 マサキは、前の世界でソ連崩壊を、社会主義の失敗を見てきた男である。
たかがオレンジのこととはいえ、食料の供給システムは、その国家の真の豊かさを測る尺度になる。
そう思って訊ねたのだ。



 日が暮れて間もなく。
外出先から、アイリスディーナが帰ってきた。
 
「ただいま、もどりました」
 勤務服姿の彼女が、玄関をくぐると、声がする。
屋敷の居間からであった。

 なにやら、ベアトリクスと誰かが語り合っている最中であった。
そっと、覗いてみると、意外な人物であることに、アイリスは驚愕した。
 ベアトリクスと今で話していたのは黒髪の東洋人。
木原マサキだった。
軽食の後、居間で二人して、トランプに興じていたのだ。
「やられたわね。ま、まったく……あんた、やるじゃない」
「七ならべがこんなに強いとはなあ……。
9回連続で負け通しだぜ」
「負けたから、私の約束を聞いてよ」
マサキはトランプの札を手で、もてあそびながらささやいた。
「なあ……最初の一回は俺の勝ちだ。
勝った人間の言う事を聞くのなら……
勿論、俺の言う事も聞いてくれるんだろう」
ベアトリクスの顔が、パアと赤らんでしまう。 
「それは……人妻に掛ける言葉なの。酷いわ」
 ベアトリクスは、すねて少し怒った。
そのさまを見たマサキは、会心の笑みを漏らした。
「だから、断っておいたじゃないか。本当に面白い女だよ」


 唖然としているア
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