第二十七章
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「二人なんてよ。災難そのものだぜ」
「残念だがそれは悪夢ではない」
「違うっていうのかよ」
「本当の悪夢はな。より暗くて濃いものだ」
そう語るのだった。
「それを味わった者でなければ得られないものがあるがな」
「何か知らねえがおめえも苦労してんだな」
モモタロスにはそれだけがわかった。
「随分とな」
「俺は世界の中心にいる。だからこそあらゆることを知っているのだ」
「世界の中心かよ」
「そうだ。そしてその俺が言う」
天道はいつもの天道の調子で言葉を続ける。
「俺が見ているものは。もうすぐ出て来る」
「もうすぐ!?」
「そうだ。見ろ」
目の前から若い二人の男が歩いて来た。見れば天道と加賀美にそれぞれ似ている。
「あの二人って」
「天道さんと加賀美さんにそっくりじゃない」
ハナもコハナもその二人を見てほぼ同時に言った。
「まさか」
「三十六年前だから」
「そうだ。俺の親父と加賀美の親父だ」
天道は言う。
「あの二人はな」
「確か日下部総一さんと加賀美陸さんだったわよね」
「知っていたか」
「ええ、聞いていたわ」
コハナが天道に対して答える。
「貴方が三歳の時にネイティブに殺されたのよね」
「そうだ。根岸達にな」
表情こそ変えないが声はくぐもったものになっていた。
「殺された。だが俺はその記憶を持ったネイティブにライダーベルトを授けられてカブトになった」
「そうだったんですね、天道さんは」
「親の顔は覚えてはいなかった」
こうも言う。
「ひよりとも離れ離れだった。しかし」
「今こうして目の前にいるわね」
「ああ」
今度はハナの言葉に頷いてみせる。
「会ったわけでもないのに懐かしいな」
「そうですよね。僕も両親のことは殆ど憶えていないですけれど」
そうした意味で天道と良太郎は同じだった。二人の心の中に互いに対する親近感も芽生えたがそれはあえて言わなかった。お互いに。
「やっぱり父さんと母さんのことは」
「そういうものよね、やっぱり」
「ハナさんは姉さんと侑斗の子供だけれどそういうのはあるの?」
「ええと、それは」
その問いに対してはハナにしろコハナにしろ首を傾げるのだった。
「愛理さんはともかくとして侑斗には」
「あまりないわね。というか全然」
「そうなんだ」
「正直。親ってどういうものかっていう感覚はないわ」
そうした意味でハナは不幸と言えば不幸だった。
「私のいた世界も元に戻ったけれどね」
「それでもなんだね」
「ええ。それで天道さん、良太郎」
あらためて二人に声をかける。
「御二人とはどうするの?」
「むっ、待て」
ハナが言ったところで天道が制止してきた。
「どうしたの?」
「何か出て来たぞ」
「えっ、あれっ
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