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神々の塔
第三十四話 夜のアリアその十一

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「その時代に一人か二人しか歌えない様な」
「そんな歌やないですね」
「そうよ」
 このことを言うのだった。
「だから人も多くの歌手が歌っているわね」
「そうですね」
 シェリルもそれはと頷いた。
「コロトゥーラソプラノの人は」
「難しい曲だけれど」 
 夜の女王はまたこう言った。
「それでもね」
「歌えますね」
「そのことは覚えておいてね」
「ワーグナーとちゃうな」 
 リーはこの作曲家の音楽を思い出した。
「あの人はテノールやが」
「ヘルデンテノールね」
 アレンカールが応えた。
「ワーグナーといえば」
「あのテノールも難しくてな」
「歌えるっていうとね」
「そうはおらん」
「世界でもね」
 その為彼等が起きた世界ではヘルデンテノールは非常に貴重な存在として重宝される。ある人はワーグナーテノールは世界に五人といないと言った。
「そうよね」
「そやからな」 
 だからだというのだ。
「そこはな」
「ちゃんと知っておくことね」
「ワーグナーはそこが難しい」
「そうなのよね」
「そやけどな」
「モーツァルトさんの曲はちゃうわね」
「難しくてもな」
 それでもというのだ。
「歌えることはな」
「多くの人が」
「事実でね」
「夜の女王さんの言う通りや」
「そこが不思議よね」
「だからや」
 それでというのだ。
「今も魔笛は上演されていてな」
「愛されているわね」
「夜の女王の歌がどうか」
 作中二曲ある、特に二曲目の復讐は地獄の様にが有名でありこの塔でも夜の女王はこちらの力が凄まじかったのだ。
「それも注目させてな」
「ええ、それで若い人も歌って」
 コロトゥーラソプラノの登竜門の一つでもある故にだ。
「人気を得ているわ」
「そうやな、ほな私達もや」
「聴けばいいわね」
「起きた時、こっちの世界でも塔を踏破したら」
 その時はとだ、リーは仲間達に話した。
「そうしたらな」
「舞台で聴けばいいわね」
「レコードもある」
 この世界でもそれがあるのだ。
「それで聴いてもな」
「ええのよね」
「そや、ええ曲はな」
「どんどん聴くべきね」
「夜の女王さんの曲もな」
 これもというのだ。
「そうしてこな」
「ほなね」
 アレンカールも頷いた、そうしてだった。
 また一階上がった、一行は戦を終えても一階一階進んでいっていた。


第三十四話   完


                  2023・7・15
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