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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
敢闘編
第七十話 挟撃 U
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心暗鬼を誘う…。
「ロイエンタール中佐の言う事は尤もだ。だがそれは既に折り込み済みだ。この作戦の成否は前面の敵を早期に撃破出来るか否かにかかっている。ボーデンの敵が此方の思惑を見破るなら、時間的余裕はあと二日といった所だろう」
「成る程。ではまだ勝算はあると」
「…厳しいだろう。敵が各艦隊の兵力を増強しているとは予想外だった。敵の第一艦隊を撃破したなら、撤退を進言するつもりだ」

 「ほう…撤退を進言、ですか」
二人は少し驚いていた様だった。顔を見合わせている。
「私が退き時を分からないとでも?一個艦隊の撃破では不足かな?」
ミッターマイヤーが身を乗り出した。
「いえ…ですが、少し消極的と受け取られるのではありませんか?」
「目の前に敵が残っているのに戦わないのは戦意不足、と?確かにそう考える輩もいるだろうな…」
目の前の二人は分かっているだろうか。この艦隊を含めた遠征軍艦隊が帝国軍の体制が整うまでの唯一の機動部隊である事が…。この艦隊が敗れてしまったら、大貴族達が騒ぎだして彼等が前面に出る事態になるだろう。彼等が持つ武力を、彼等自身が使い出したら、帝国は瓦解しかねない。帝国軍が次の矢をつげるまで、まだ時間がかかるのだ。戦いを止めてでも無事に帰還せねばならないのだ。
「…だが、そういう批判を行う者達を封ずる為にも、余力を保って退かなくてはならない。分かるかな?」




03:00
銀河帝国軍、遠征軍、ヒルデスハイム艦隊旗艦
ノイエンドルフ、
ウォルフガング・ミッターマイヤー


 ギースラー艦隊、遠征軍司令官クライスト大将の直属艦隊、そして我々のヒルデスハイム艦隊による包囲陣がほぼ完成して、敵第一艦隊への本格的な攻撃が開始された。今までしぶとく戦っていた敵の第一艦隊も、崩壊するのは時間の問題だろう。しかし…この眼前の敵艦隊を撃破した後に撤退するとは…。中々出来る事じゃない。毅然とした態度で戦況を注視するこの大佐…中々どうして先を見ている御仁の様だ。余力を持って退く…当たり前の事の様に思えるが、余力があるのなら戦果拡大を狙うのが軍人の常だ。味方が劣勢なら尚更だろう。敵は叩ける時に叩かねば後顧の憂いを残す…よく言われる言い回し…この状況で撤退を進言するなど気でも触れたかと思われるだろうが、目の前の大佐が敢えてそれをやるという事は、却下される心配はないという事か。
 聞けばミューゼル大佐は寵姫グリューネワルト伯爵婦人の弟だと聞く。だが宮廷内で彼が重んじられる事はなくむしろ疎まれているとも聞いている。金髪の孺子、などという蔑称がそれを如実に表している。だが、この艦隊でそれを聞く事はない。むしろヒルデスハイム伯爵やシューマッハ参謀長は彼を信頼し重用しているし分艦隊の司令官達もそうだ、彼等のミューゼル大佐への評価は高い。
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