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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
敢闘編
第七十話 挟撃 U
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第十二艦隊が居るから戦えているのだ。第一艦隊が包囲されてしまえば、第十二艦隊は第一艦隊の援護をするか否かの判断を迫られる…。
俺と似たような顔をして伯爵を見ていた参謀長が深く頷いた。
「最良のご判断と存じます、閣下」



宇宙暦793年7月1日01:15
自由惑星同盟軍、アムリッツァ駐留軍第一任務部隊、
旗艦アストライオス、宇宙艦隊司令部、
オットー・バルクマン


 フォークの予想が当たった。敵は別働隊を用意していた。しかも第一艦隊を包囲する戦線に加わろうとしている節がある。
「パエッタのとっつぁんが足を引っ張らなければこんな事には…」
マイクが頭を抱えている…って、まだパエッタ提督もとっつぁんなんて呼ばれる歳にはなってないぞ…そんな事はどうでもいい、ヤマトはここからどう指示を出すのだろう。
「マイク、第二艦隊に連絡だ。敵の左翼の、正面に狙点を固定しろと伝えろ。攻撃参加している全艦で行えと。立て直す時間は稼げる筈だ」
「…一点集中砲火か。了解した」
 連絡は行われたものの、第二艦隊がヤマトの指示を実行したのはそれから十分ほどたってからだった。二十近い年下の、しかも下位の若者からの指示を素直には聞く気になれなかったのだろう…。しかし第二艦隊が指示を実行すると敵左翼艦隊の陣形に幾つか大きな穴が空いていた。一点集中砲火、艦隊の構成艦艇が同一目標を狙って斉射を行う。素早く狙点を指示できれば効果は大きいが、それが出来ない時は攻撃間隔が開いてしまい逆効果に陥る。第二艦隊の攻撃は指示と多少違ってめくら撃ちの様な攻撃だったが、効果はあったようだ、敵の左翼正面の陣形が狙撃を避けるために広がり出した。確かに第二艦隊が体制を立て直すきっかけにはなっただろう。だが…艦隊の個別の戦術に関して口を出すのはたとえ宇宙艦隊司令部とはいえ越権行為ではないのか?確かに第二艦隊がしっかりしてくれないと戦線が崩壊するのは確かなんだが…ヤマトはパエッタ提督を信用していないのだろうか…いや、信用ではなく信頼していないのかもしれない…。

 「閣下、此方に砲火が及ぶ危険性があります。旗艦の現座標からの後退を許可願います」
「了解した。艦の事は艦長の宜しい様に」
「はっ」
ガットマン艦長とヤマトの短いやり取りがあった。確かに現在の位置では敵の砲火に巻き込まれかねない。微速後進、という命令が聞こえる。艦長はエル・ファシル警備艦隊勤務の時も我々と旗艦勤務していたから、旗艦が後退する事の意味をよく知っている。急速後進をしないのは流石だった。
「ヤマト、少し苦しいな」
「ああ。フォークが敵の意図を読んだのは流石だけど、本当にこうなってしまうと厳しいな…第二艦隊に命令、艦列の立て直し完了次第、前進せよ」
「前進…?いえ、了解しました」


02:00

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