敢闘編
第七十話 挟撃 U
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帝国暦484年7月1日01:00
フォルゲン星系、銀河帝国、銀河帝国軍、遠征軍、
ヒルデスハイム艦隊、旗艦ノイエンドルフ
ラインハルト・フォン・ミューゼル
遠征軍本隊と叛乱軍艦隊の戦闘は膠着状態に陥っていた。
本隊前衛の中央ゼークト艦隊及び左翼シュトックハウゼン艦隊の前進を叛乱軍中央と右翼が受け止め、残った此方の右翼ギースラー艦隊と彼等の後方に控えていた後衛の遠征軍司令部クライスト艦隊が味方右翼の外側を迂回して前進、叛乱軍の左翼を半包囲していた。叛乱軍艦隊は三個艦隊ではあったが、戦力が増強されていたようだ。フォルゲン到着前の戦況連絡で、敵は四万五千隻と聞いた時は耳を疑った。
「叛乱軍左翼の指揮官は中々しぶとい男の様だな。劣勢ながらもよく戦列を維持している」
頬を載せた肘をついて、ヒルデスハイム伯が感心した様にスクリーンを見つめている。
「叛乱軍左翼は第一艦隊…指揮官はクブルスリーという男の様です」
オペレータからの情報をシューマッハ参謀長が読み上げた。
クブルスリー…聞いた事はないが出来る男の様だ。
「叛乱軍にも優秀な指揮官が居る、という事だな…しかし、敵の右翼は中央に比べ陣形が雑然としているな。艦艇数が多い事に救われている様だ」
本隊による敵の通信傍受の結果、叛乱軍艦隊は右から第二、第十二、第一艦隊という並びの様だった。常識的に考えれば中央には経験豊富で信頼出来る指揮官を、左右どちらかに切り札となる指揮官を…となるが、そうすると目の前の戦場では敵右翼は経験の浅い指揮官が率いているのだろう。参謀長が引き続き読み上げる情報がそれを裏付けていた。
「敵の中央、第十二艦隊司令官はボロディンという男で、派手さはないが堅実な用兵をする軍人、との評価を得ている様です」
「ほう」
「左翼、第一艦隊司令官クブルスリーは戦略的思考を有する有能な軍人、右翼の第ニ艦隊司令官パエッタは参謀としての経験が長く、艦隊司令官としては未知数、とあります。フェザーン経由の情報です。パエッタとクブルスリーは同時期に艦隊司令官になっている様ですから、艦隊運用能力についてはクブルスリーの方が上の様です」
参謀長の説明が終わると伯はふう、と息を吐いた。
「叛徒共の指揮官の情報があるというのは有難い事だな。艦隊兵力の増強までは知りえなかった様だが…となると…我々が攻撃参加するのは半包囲している敵左翼側ではないかな?」
内心伯爵には感心せざるを得ない。目先しか見ない指揮官であれば比較的弱い印象のある敵第二艦隊の位置する敵右翼に攻撃参加するだろう。しかしそれでは敵が防御に徹して有効な打撃を与えられないかもしれない。であれば半包囲陣形に参加して、此方の二個艦隊相手にしぶとく戦っている敵第一艦隊を先に撃破した方が、敵に与える影響は大きいだろう。敵第二艦隊は中央の
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