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神々の塔
第三十四話 夜のアリアその三

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「悪役でもな」
「憎めんな」
「どうもな」
 こう言うのだった。
「わいも」
「というか夜の女王を誰が歌うか」
 真剣な顔でだ、メルヴィルは言った。
「それがな」
「大事やな」
「あの作品においてはな」
 シェリルに述べた。
「そうなるな」
「ほんまそうやな」
「そのこともあってな」
「夜の女王は悪役でもな」
「憎めんわ」
「そやな」
「まあモーツァルトの作品憎めん役ばかりや」
 こう言ったのは施だった。
「ほんまな」
「それは言えるな」 
 シェリルもそれはと頷いた。
「あの人の作品は」
「端役なしでな」
 モーツァルトの歌劇はこうも言われる。
「それでな」
「魅力的な登場人物ばかりや」
「不思議な位な」
「それを音楽で表現してるからな」 
 羅は唸る様にして言った。
「ほんまな」
「あの人は天才や」
「文字通りの」
「そう言うてええな」
「そのモーツァルトさんの世界に今いると思ったら」
「悪うないな」
「ああ、あの人は人が好きやったみたいやし」
 それが音楽に出ていると言うべきか、モーツァルトの天才は彼の作品の登場人物達全てにもたらされているのだから。
「尚更な」
「あの人悪い人やなかったんよね」
 綾乃はこのことを言った。
「少なくとも」
「かなり変人さんやったみたいやけどな」
「それでもやね」
「飾らへんで悪意はなくて」  
 無邪気と言っていい位だったという。
「悪いこともせん」
「そんな人やったね」
「そやったみたいやな」
「善人もそれもかなり純真な」
「子供みたいと言ってええ位の」
「そうした人やったみたいやね」
「まあお金の使い方が滅茶苦茶で」
 作曲で得た収入を常にビリヤードに注ぎ込んでいたという。
「下品なことが好きな」
「性格破綻者やったみたいやね」
「けど悪人か善人かっていうと」
「完全に善人やね、あの人は」
「それが音楽にも出ていて」
 そしてというのだ。
「どの登場人物にも愛情を注いでる」
「素晴らしい音楽を与えてるね」
「端役なしと言われるまでに」
 その為若い歌手の成長にも用いられる位だ。
「そうしてるわ」
「そうした人で」
「それで夜の女王さんも」
「物凄い曲与えられてて」
「この世界では神霊さんで」
 そうなっていてというのだ。
「その音楽の力でな」
「戦って来るね」
「そやで」
 こうだ、シェリルは綾乃に話した。
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